ストレイト

昼休みの喧噪の中私は一人浮かない顔をしていた



トレイト



唇を尖らせる私の目の前には

いつもの笑顔を崩さない舞美ちゃん

ふざけてるわけじゃないんだろうけど

今の私にはそれも唇を尖らせる要因でしかない


「愛理、どうしたのさー」

「悩んでるんだもん、真剣に」

「あはははーごめん、ごめん。」


それでも一番頼れるのが舞美ちゃんしかいないから

私はこうやって今、ここに居るわけだ

そうでもなかったら、単身先輩の教室になんて乗り込む勇気なんてない


「で、なんだっけ?」

「えりかちゃん…梅田先輩のこと」

「あー、えり、えりね」

「好きな人、居ないの?」

「んー、どうだろ?」


でも、舞美ちゃんは結局頼りにならない

えりかちゃんの一番近くに居るはずなのに

あんまり知らないみたいな口ぶりをする

それが不満なわけじゃない

だって、誰から見てもえりかちゃんはそんな人だからだ


大勢で居てもフラフラとしていて

良い意味でも悪い意味でも目立つ人

顔は凄く綺麗で、派手で目立っていて

素行は皆が口を噤むほど、良くない

それなのにとっつきやすさは抜群で、元来明るい性格なのか

私にだって優しく話しかけてくれる人だ


そんな人を好きにならない人なんているのかな?

って言う、勢いで私は自然にえりかちゃんに恋に落ちていた


だけど、話せるだけでほとんど何も知らないことに気付く

名前は分かるし、身長も私より大きいことくらい分かってる

でも、それくらいしか知らない


「私もさ、よく分からないんだよね、えりって」

「そっか…」

「でも、愛理のことは可愛がってると思うぞー」

「…ホント?」


だから、そんな些細な言葉一つで嬉しくなる自分がいる

本人から言われるよりも、他人から見てそう言われるのって

要するにお似合いな二人って見えてるわけだし

そういう風に言われるなら自信持っても良いのかな?


「まー、えりは私にも優しいけどね、とか言って」

「…そう言うこと言わないでよ」

「ごめん、ごめん。でも、それがえりだから」


それが、えりかちゃん…確かに納得のできる言葉だ

私にも優しければ、舞美ちゃんにも優しくて、

私の知らない誰かにも優しいんだろう

それは凄く胸が苦しくなることで、

でも、微笑んじゃう様なことでもある


「あっ、噂をしたら…」


舞美ちゃんの視線の先には欠伸をしながら教室に入って来るえりかちゃん

あー、綺麗だななんて思っていると

誰かに呼び止められてそっちを振り向く

ほら、そうやってまた笑顔を簡単に作るんだ


「はぁ…」

「溜息だめだぞー」

「分かってるよー、でもさぁー」


私は言葉を飲み込んだ

だって、えりかちゃんの気持ちが分からなくたって

私の気持ちは決まっているから

あとは真っ直ぐあなたに気持ちをぶつける勇気が必要なだけ