新章
「そろそろ村に着きますよ」
「…んっ、着いた?って、ごめん、寝てた」
「いえいえ、疲れたんですよ、頑張ってましたから」
愛理が雅の肩を優しく揺する
目を擦りながら、雅は何度か頭を下げる
愛理はそれを見て目を細める
えりかと舞美のパーティは滞り無く終わった
始終カメラを構えていた雅はあっちへ行ったり、こっちへ来たり
愛理と二人で居られる時間はほとんどなかった
だから、愛理は少しだけ有機を振り絞り
帰りは一緒にどうかと誘った
雅は迷惑をかけてしまうからと断り続けたが
最後は舞美に乱暴に背中を押されて愛理の乗る車に乗せられた
「ホント、ごめんね」
「私がワガママ言って乗ってもらったんで良いですよ」
「う〜ん、そうなのかな?あっ、ここ…僕の家ここだから」
窓から見える景色に随分と懐かしく思える
たった数日空けただけなのに、と思ったが
雅は理由が分からないから考えるのを止めた
「小さな家だけど、元気がある時は遊びにきてよ」
「はい、是非いきます」
車から降り、軽く挨拶をして
去って行く車を見送ると、雅は駆ける様に家へ向かう
と、ドアに張り紙がある
丁寧な字で書かれていたので誰からか直ぐに分かったが
最後にしっかりと名前が書いてあったので
乱暴に剥がすと、荷物だけ置いて踵を返した
* * * * *
「まぁさん、帰ったよー」
隣の家のドアの前
雅が茉麻に声をかける時はいつも
間延びした、子どもの様に暢気なものだった
それを聞いた瞬間、バンっとドアが開いたと同時に
雅は小さな衝撃を感じた
「りさこ、いたい…」
「どこ行ってたの?」
「まぁさん、これどかしてよ」
「あっ、みやおかえり」
茉麻の家に梨沙子が居ることは珍しいことではなかった
3人で一緒に過ごすことも多々あり、
だから、今回も雅は梨沙子が飛びついてきたことに何ら疑問は抱かなかった
「ただいま。」
「どこに行ってたの?」
「幼馴染の婚約パーティ」
「へー、どうだった?」
「疲れた、ヘトヘト。梨沙子が重い。」
まだドアのところで動かない二人を見て茉麻は苦笑いをすると
近付いてきて、梨沙子の頭をポンポンと優しく叩いた
「みや、疲れてるってよ」
「…」
「ほら、ご飯一緒に食べよう」
茉麻の言葉に小さく頷くと梨沙子は雅をやっと離した
解放された雅も梨沙子の頭をポンと叩く
それに唇を尖らせて、梨沙子は雅の脇腹を小突いた
「二人とも、遊んでないで早く座って」
「「はぁーい」」
仲良く返事をする二人に
茉麻はやっぱり苦笑いするしかなかった