×××私と先輩××× 11

「ごめん、お留守番しといてください」

「えー、なんで?」

「これ、届けなきゃ。30分くらいで戻るから」

「うーん、分かった。」


佐紀の家の玄関を出た所で桃子は佐紀の背中に向かって手を振る

テスト前は恒例となった勉強会をするために佐紀の家に来たのだが

その本人が留守を任せてくれたってことは家に他の人は居ないんだろう


「お邪魔しまーす」


予想通り誰もいないらしく、シーンと静まっている

それでもいつも通り靴を脱いで、一目散に佐紀の部屋に向かった

床に置かれた机の上には開かれたままのノートと辞書

それを見て「真面目だなー」って感心すると

桃子は一旦休もうと思い、ベッドに腰を降ろす

フワッと沈んでしまうほどフカフカのベッド

それがつい楽しくて何度か弾みをつけ、体を倒す


「あっ…」


桃子は気持ち良さに目を閉じると

そのまま眠ってしまった


* * * * *


「んっ…」

「起きました?」

「ん〜、佐紀ちゃん?」

「はいはい、そうですよ」


ベッド付近の床に座り、開いている教科書を見ながら

佐紀は桃子の相手をする

そんな佐紀の頭を寝ぼけ眼で見つめながら

桃子は小さく欠伸を一つして、目を擦った


「今、何時?」

「19時30分くらい」

「…もも、何時間くらい寝てた?」

「4時間くらい」

「何で起こしてくれなかったのー」


目が覚めてきたのか、桃子は途端に五月蝿くなる

しかし、それを全く気にしない様子で佐紀はペンを走らせる

それに少し怒った桃子はポカポカと佐紀の頭を叩く


「何でって、桃ぐっすり寝てたから」

「でも、勉強時間減ったー」

「どうせ、家でもしてたんでしょ。」

「でもー」

「それに、寝顔可愛かったから」


トーンも変えずに佐紀はボソリと呟く

桃子はそれが佐紀の作戦だと分かっていながらも

“可愛い”と、その一言を言ってもらえただけで嬉しくなってしまう


「もう、今回は許す」

「て言うか、桃が寝なかったら良かったんじゃない?」

「えー、だってーこのベッド気持ち良いんだもーん。それにさー…」

「それに、何ですか?」

「佐紀ちゃんの匂い、したんだもん」


桃子の発言に、佐紀はゆっくりと振り向く

それに照れたのか、桃子は焦って布団で顔を隠して

目だけを佐紀に向ける


「匂いとかしますか?」

「うん、佐紀ちゃんの匂い」


佐紀は桃子が被っている掛け布団を少し引っぱり

顔を埋めて、匂いを嗅ぐ

が、すぐに顔をあげて、怪訝そうな顔をする


「何にもしないと思うけど」

「もぉには分かるの、佐紀ちゃんの匂いがっ!!」


少し口調を荒くして、桃子は起き上がって佐紀に訴える

それを見た佐紀は立ち上がり、桃子の横に腰を降ろした


「はいはい、分かったから」

「もうっ、絶対思ってないでしょ」

「本当に分かったから。僕だって桃の匂い分かるし」


そう言いながら、起き上がっていた桃子の体を倒すと

佐紀はその上に覆い被さる


「桃ってすっごく甘くて良い匂いがするんですよ」

「ちょっと、佐紀ちゃんくすぐったいよ」


桃子の首筋に顔を埋め、大きく息を吸い込む

それがくすぐったかったのか、桃子は身体をクネクネと動かす

それを押さえつける様に、佐紀は腕に力を込める


「動かないでよ」

「でも、勉強しなきゃ…」

「ホントに、勉強でいいですか?」


そう言って、少し幼い感じで微笑む佐紀を見上げる

時々こういう表情をされてしまうから

桃子は佐紀に強く言い返すことが出来なくなってしまう

すがる様な佐紀の視線をはがすことが出来ない


「桃はどうしたいの?」

「……分かってるくせに」

「言ってくれなきゃ分からないですよ」


ジッと佐紀を見つめる

何を考えているか分からない様な雰囲気なのに

桃子は簡単に見透かせる様な気分になる

それは自分の気持ちの問題なんだろうって、自然と思った


「…しよう、今から」

「んっ…」


桃子がそう言うのを待っていた様に

佐紀は軽く口づけて返事をした