苦笑い
重厚、荘厳、神聖
どの言葉が一番ぴったりと合うか分からなかったが
雅はその部屋に入った瞬間、ブルッと身震いをした
今から起こる事は凄く良い事なのに
雅はちょっと苦手な雰囲気だと思って苦笑いをしてしまう
しかし、写真を撮る事は忘れない
姉の様な存在のえりかの婚約
わざわざ婚約でパーティーを開くのは
相手が随分偉い病院の医者だかだとえりかは雅に告げた
素人の趣味でしかないのに写真を撮ってと
こんな大事な場面で頼んできたえりかの要求は満たさなきゃいけない
それくらいは分かっていて、首からかけたカメラの重さがそれを忘れさせない
まだパーティーは始まっていないのに
ネクタイを緩める事すら出来ない様な空気に雅は息がつまり始める
少し外に出て休憩でもしようかと振り返った瞬間だった
「やぁ、雅くんだったっけ?」
「…どうも」
「あぁ、そっか…」
そこに居たのは舞美で、雅は更に気分が重くなる
そんな雅とは対照的にニコニコとしている舞美は
雅の言葉に耳を貸さないで一人何かに納得した様に頷いている
「そうだ、外行くの?」
「はい…」
「悪いんだけど、隣の部屋にこのブランケット届けてくれないかな?」
自分でしたら良いじゃないか、と言おうとした瞬間
舞美の後ろから大柄の男が近付いてくる
「矢島くん、あちらに村田先生がさんいらっしゃるから」
「はい、分かりました。すまない。と言う事なんで、頼まれてくれないかな?」
半ば強引に雅にブランケットを押し付け
舞美はその男に付いて離れて行く
「ホント、あいつ嫌いだ…」
舞美が目の前に現れてから良い事が無い
頭の中ではそんな事がグルグル回っている
「ったく、仕方ないか…」
それでもずっとブランケットを手に持っておくわけにもいかない
丁度この場を離れたいと思っていたし、引き受けるか
と楽観的に思って、雅もその場を離れ歩き出した