何が動いたかなんて問いに対する答えは簡単で
それは僕の中にいる本能だったとしか言えなかった
約束 〜2〜
中等部の後輩の千聖の友達だった
スラッとしているのに小動物みたいな印象があって
誰から見ても可愛いって言葉が出てくるんじゃないかなって思った
少し挙動不審な行動も、はにかんだ様におっとり話す仕種も
あぁ見るからにお嬢様だなって思ってた
話してみるとイメージ通りの部分と
そうじゃない部分があった
なんて言うかギラギラしてるって言うか
負けず嫌いな部分が強く感じられた
案外強かな子なんだって思うと面白くて
どんどん興味が湧いてきて、千聖を通して仲良くなった
計算外だったのは中々優しいイケメンの彼氏が居た事
でも、興味持ってしまったのは仕方が無いし
誰かを好きになる事を止められるのは自分自身しか居ない
僕が一人勝手に好きで居る分には良いだろうって思っていた
ここでまた計算外の事が起こった
彼女、愛理が僕の事を結構好意に思ってくれてる事
彼氏に不満でもあるの?なんて聞いたら僕の好意はバレるだろうから
あくまでも自然に良い先輩で居ようと努力した
すればするほど、愛理との距離は近付いてった
普通に二人で会う事だってあって
その度に僕は愛理の事が好きになっていった
「良いの、彼氏さんとの約束?」
「はい、大丈夫です…」
そんな不安そうな顔するなら、誘いになんて乗っちゃいけないよ
大体、年頃の女の子が無防備に男子の誘いに乗るなんてどうかなぁ?
爽やかそうに見える先輩だから?
優等生なんて言われてる先輩だから?
なんて、心配するフリしてみるんだけど、
不安そうな表情でさえ可愛いなって思っちゃって
とうとう僕はおかしなヤツなんじゃ無いかって笑ってしまう
「何かあったんですか?」
「へっ、何が?」
「笑ってたから、私またおかしな事したかなって…」
頼り無さげに下がった眉
君の可愛さにそれが入ってるって分かってる?
もう、君の全部貰っても良いかな?
「愛理、コッチ来て」
「えっ、はい…」
チョコチョコって小さく一歩を刻みながら近付く愛理を強引に抱きしめる
ビクンって少し驚くんだけど、しっかり僕の腕の中に収まってる
やばい、笑いそうだ…
愛理が誰かのものだからってワケじゃない
僕が欲しかったものが手に入ったから
罪悪感が無いワケじゃない
でも、それよりも愛理が欲しいって気持ちが強くて
歯止めなんて効かなくて
背中に回ってくる腕も、漏れてくる息も
細くて綺麗な髪の毛の一本、一本だって
全てを包み込んで、僕しか見えないところに隠してしまいたい
僕のものだってしるしを付ける様に荒々しくキスをする
ダメだ、気持ちよすぎて止められない…
「んっ…」
「くる、し…」
「あっ、ごめん…」
顔を真っ赤にさせて、トントンと肩を叩かれる
案外、力強いんだなんて悠長に思いながらも
キス、止められそうにない
段々気持ちが舞い上がってきて自然と彼女の胸に手を置く
全体的に細くて乱暴に扱ったら壊れてしまいそうで
恐る恐る動かし始める
「あっ…」
「もう、戻れないよ、ホント良い?」
「…」
迷ってるのは分かってる
だから、決断は愛理に委ねようって思ってる
せめてもの優しさ、それと少しの自信
愛理が必ず僕を選ぶって言う自信と
彼氏の事忘れさせるって言う自信
沈黙が二人の間に流れる
こういうの少し苦手で、強引にガーッと行っちゃいたくなるんだけど
好きだからこそ、愛理の事は大事にしたいって思ってるから
いつまでだって待つよ、って気持ちで何も言わない
どれくらい経っただろう、愛理が口を開きかけた時だった
携帯の着信の音
僕のじゃないから愛理のだろう
「出なよ」って言おうと顔を覗き込んだら
えらく動揺して、少し青ざめている
「もしかして、彼氏?」
「…はい」
「出た方が良いと思う」
抱きしめていた腕の中から抜け出した彼女は
重そうな足取りで鞄に向かい携帯を取り出す
一瞬、大きく溜息を吐いたあとにボタンを押した
息を殺す様にそれを見つめる
ちょっとだけ泣きたくなった
「もしもし、みや?どうしたの?」
『……』
「えっと…友達の家」
何を話しているんだろう?
気になって仕方が無いけど、冷静を装う
何か、雰囲気壊れちゃったな…
「分かった、直ぐ行く…うん、じゃあね」
あっ、帰るんだ…残念
「あの、すみません…私帰ります」
「いや、こっちこそ、ごめん」
「いえ、私の意志ですから」
やっぱり、この子はギラギラしてる
おっとりした中にメラメラと燃える炎がある
そこがたまらなく好きだと思った
「じゃあ、また来てよ」
「はい、分かりました」
さっきまでの不安そうな表情は消えていて
八重歯が覗く可愛い笑顔を見せてくれる
彼女が出て行ったあとの部屋
僕は一人、何とも言えない満足感を抱いていた