パラパラって降りてくるのは
真っ白な粉雪と淡い恋心
アワイコナユキ
冬の屋上は風が強くて好きじゃない
それはちょっと前までの話
今では暑くたって、寒くたって、風が強くたって
手すりがなくて下が見えて怖くたって
この学校で私のお気に入りの場所はこの屋上しかないと思う
「梨沙子?」
ベンチに座ったままの夏焼先輩が私に気付いて手を振ってくれる
そういうところ子どもっぽくて可愛い
はぁ、来て良かったって今日も思う
夏焼先輩はすっごく人気のある先輩だ
格好良いし、オシャレだし、格好良いし…
女子生徒の憧れって言うか、結構皆本気で好きだと思う
私が屋上にくるのだって、夏焼先輩が理由だ
ほら、だって夏焼先輩が居るし
私、夏焼先輩の事大好きだし
自分の我が儘とか言って、困らせたくないし
でも、もっと好きになって欲しくて、ずっと好きにさせたくて
だから、仕方ないくらいに会いたくて
仕方ないくらいに好きが積もっていく
「やっぱ梨沙子だー!!最近毎日来るねー」
「へへへ、私も屋上好きなんですよー」
先輩はしっかりとコートを着て、マフラーを巻いている
ちょっと遊びにきましたって感じじゃなくて
完全に居座る気があるんだろうって察しがつく
何しに学校に来てるんだろうって思うけど
あんまり勉強とか好きそうじゃないから似合ってるけど
「あっ、梨沙子寒くない?」
「えっ、私ですか?大丈夫ですよ」
そう、先輩と違って私はコートもマフラーも無い
手袋も無くて、ブレザーの下にカーディガンを着ているくらいだ
寒くないって言ったら、嘘になるし
正直なところ、かなり寒い
だって、本当はいつも先輩と会うよりも早い時間だから
どうせ、居ないだろうと思って来た
居なかったらまたコートを着て、その時間に来たら良いかって思ってた
ちょっとだけ先回りしたい気持ちで来たのに
先輩はもしかしたら本当に屋上にずっと居るんじゃないかって思ってしまう
「絶対、大丈夫じゃないし…ほら」
「うわぁー」
私の目の前まで来て、マフラーを外すと
今度は私の首に乱暴にグルグルと巻き付ける
これ、先輩の匂いなのかな…
って、私変態みたいじゃん!!そんなんじゃないもん!!
「少しはあったかいでしょ?」
「ありがとございます!でも、先輩大丈夫ですか?」
「うん、コートあるし、大丈夫」
ニコッと笑って親指を立てる
ほんと、子どもっぽい
だけど、凄く優しくて格好良いですよ、先輩…
そう思いながら紺色のニットのマフラーを両手で押さえて顔を埋める
あっ、やっぱりこれ先輩の匂いなんだよな…
「今日、早かったね」
「えっ?」
「いつもより、来るの早かった。中等部授業終わる時間じゃないじゃん」
「自習だったんで。」
バレそうな言い訳で、なんとか本心を隠そうとする
先輩はふーんなんて言って納得してる雰囲気で良かった
やっぱり、先輩は勉強とかそういうのダメな人なんだろう
私も言えたことじゃないけど…
「しっかし、寒いねー」
「ですねー、雪降りそうだなー」
「降るよ、多分」
「分かるんですか?」
「だって、めちゃくちゃ寒いじゃん。降らない方が可笑しいって!!」
自信満々にそんなことを言っちゃう先輩は凄く可愛い
目がキラキラしていて、ホントに雪降ったら良いのにって思っちゃう
寒いの嫌だけど、先輩が喜ぶ姿が見たいんですよー
雪なんかよりも、ずっとずっとそんな姿が見たい
降って下さいって、空に祈る様に手を組む
不純な願いだけど、叶えて下さい、神様!!
なーんて、無理だろうけど…
目を瞑ってそんな事をしていると
組んだ手にフワッと暖かさが伝わる
へっ?っと思って目を開けると夏焼先輩が私の前に居る
しかも、手、包み込まれてるし…
「寒いんでしょ?温めてあげる。」
「いや、ちがくて…その、雪降って欲しくて」
「ホントに?でも、俺がこんなことするの珍しいから受け取って」
…さっきまでの少し軽薄な雰囲気がどこにも無かった
すっごく真剣なその瞳は見たこと無くて
あぁ、ダメだ、ダメだ…
どんどん好きになるのは私じゃないか
「温かいです…」
「うん、俺も…嫌がられなくて良かった」
ヘヘへって笑う表情は、私の心にスーッと染み入ってくる
気持ち伝わらなくて良いや
願いも叶わなくたって良い
もうちょっとだけ、この熱を持っていたい
そう思ったらポツリポツリと冷たさが広がる
もう、なんだよー!!って見上げると雪だ
雪が降って来たんだ!!
「先輩…」
「ほら、やっぱり降って来た!!」
ふっと重なった手は離れたけれど
私は全然悲しくなくて
逆に何故か嬉しくて
犬の様に駆け回る先輩の姿を見て
まだまだ、こんな調子の関係でも良いかなって思った