帰郷

スーっと大きく息を吸い込む

懐かしい匂いとともに、胸の奥がチクチクと痛む



帰郷



パシャリとシャッターを切る

ファインダーを覗いていた顔を上げると懐かしい景色が広がっている

それは雅の心を暖かくさせる


「ふー…何にも変わってないな」


雅がボソリと呟くとんーっと大きく体を伸ばした

そんな雅の姿をジッと見つめる人が居る


「みや」

「やっほ、久しぶり」

「何暢気なこと言ってるのよ」


雅が柔らかく微笑むとその人はキッと目を吊り上げた

それでも雅は表情を崩さないでニコニコとしたままで居る


「大体、少しくらいは連絡しなさいよ」

「いやぁ、忙しくて暇がなかったんだよ」

「手紙くらい書けるでしょ」

「ハハハっ…えりかちゃん怒ったら綺麗な顔が台無しだよ?」


えりかと呼ばれたその人は雅に近付きコツンと一発頭を小突いた

雅はわざとらしく「イタッ!!」と言って、また笑う

その姿を見てえりかは大きくため息を吐いた


「まっ、ちゃんと帰ってきたから今回は許すよ」

「そりゃー帰って来るよ、えりかちゃんの一大事なんだもん」

「一大事って…何か嫌な表現だなぁ」

「でも結婚ってちょー大事なことじゃん?」

「結婚じゃなくて婚約」

「んー、そっか」


えりかはクルリと踵を返し歩き始めると雅もそれに続く

二人が歩く道には色とりどりの花が咲いている

雅はパシャパシャと軽快にシャッターを切りながら歩く

えりかはチラリと振り返り雅を見るが直ぐにまた前を向き歩く


道の先にはポツリポツリと家屋が見えて来る

二人はその中でも大きく綺麗な建物に入って行く


「あー、相変わらずここは背筋がピンとなるなー」

「そう?みやはずっと居眠りしてた記憶しか無いけど?」

「ちゃんと起きてたって」


二人は頭を上げ上を見る

そこにはステンドグラスがありキラキラと光が差し込んでいる


「牧師、悲しんでないの?」

「パパ?喜んでたよ、良い人と出会えて良かったって」

「ふーん…相手どんな人?」

「お医者様」


“医者”と言う言葉に雅はピクンと反応する

愛理の屋敷にやってきたアイツも医者だと言っていたっけ?

それを思い出すと、どうも落ち着かなくなってしまう


「…よくそんな人と会ったね」

「ここの子たちの健康診断に来てくれたの」

「ふーん…」

「何、ヤキモチ?」

「違うよ…実感わかないなーって」


雅はステンドグラスからえりかに視線を移すと無表情でそう言った

えりかは雅の真意が読み取れないがそれを気にせず、雅をまた小突いた


「みやは実感湧かなくて良いから、写真とってくれるだけで」

「うん、頼まれたから一生懸命頑張るよ」

「はー、早く明日のパーティーにならないかなぁ…」


一人浮かれるえりかをよそに、雅はまだ少し落ち着かない様子だった