すれ違うって事なのかな?
それとも本当は一緒の世界に居ないのかな?
転機
「あーいり、ごめんって」
「もう、舞美ちゃんなんて知らない」
「謝ってるじゃーん」
白い布団がベッドの上で少し盛り上がっている
それを苦笑いで見ながら舞美は何度もごめんと繰り返す
しかし、愛理は姿を見せないままでいる
舞美は愛理が何故この様な状況になったか飲み込めずに居る
たまの休みを貰えたから、愛理に会おうと思ってやって来た
ただ、会うのが理由ではなく、本当は他に理由がある
この状況じゃそれすら果たせそうに無い
「あいりー」
「帰ってって…」
「愛理に伝えたい事があって来たのに…」
「舞美ちゃんはタイミングが悪い、悪過ぎです」
布団に包まったままの愛理の声は少しくぐもっていて聞き取りづらい
ただでさえモソモソと喋る愛理だから、更に聞きづらい
舞美はそんな愛理の居るベッドに近付いて、その縁に座る
ポンと愛理がいるであろう所を叩くと大きな声を出す
「愛理に良いお知らせがあったのになー」
「…」
「まぁ、愛理は聞きたく無いみたいだから、僕は帰ろうかな…」
「待って、聞く…」
愛理が顔の上半分だけを布団から出し、舞美の方を向く
その表情はまだ少しだけ怒っている様に見える
舞美はそんな愛理を見るとまだまだ子どもなんだなと笑ってしまう
しかし、そんな舞美を見て愛理はまた布団に隠れようとしてしまう
舞美は慌ててその愛理を止め、ごめんと謝った
「で、なぁに?」
「愛理が今一番聞きたい事、伝えに来たよ…」
「ホント?」
「うん、本当…」
舞美は今日一番の優しい笑顔を見せると
愛理は一瞬にして目を細めてとびきりの笑顔を作った
* * * * *
「みや、休んでも良いからちゃんと連絡入れてよ」
「んー」
机の上に突っ伏して、小さく縮こまっている雅を見て
茉麻は大きくため息を吐いた
何かあるとこうやって塞ぎ込む癖が雅にはあった
しかし、最近ではそんな事全く無くなっていて
明るく元気な姿しか見せないから、茉麻は雅のそんな癖を忘れて居た
でも、今日雅が仕事に来なかった
しかも、無断欠勤というヤツだ
頑なまでに有給を使おうとしない雅が無断欠勤をするなんて
仕事場は心配の声が飛び交っていた
「とりあえず、今日は有給にしとくってキャプテンが」
「そう…」
「明日は休む?」
「んー分かんない…」
茉麻はまたため息を吐くと、どうしようもないなと首を傾げる
雅との付き合いは結構になるけど、こういう時の対処法がいまいち分からない
押してダメなら、引いてもダメで
物で釣ろうにも上手く行かない時もある
「あーもうっ、何があったのさ?」
「何にも無いけど…」
「そんなワケないでしょ…ちゃんと言いなさい」
少し怒ってそう言ってみるけれど、雅には通用しない
これは本格的に沈んでいるんだ、と思うと
茉麻はお手上げだ、と思って雅の向かいに腰を下ろす
机の上にはポストから出したままの状態で手紙やらが散らかっている
茉麻はそれを一つ一つ仕分ける様に手に取って眺めて行く
どれも見た事のある様な名前の中に一通だけ、茉麻の知らない名前がある
雅は5年前にこの街に単身、やって来た
人見知りの激しいタイプだったが
それを上回る世話好きが街には沢山居たお陰で、雅はすぐに受け入れられた
だから、雅のこの街での知り合いは大体茉麻の知り合いでもあった
その茉麻が見当つかない人からの手紙が机の上にある
「ねぇ、みや…」
「んー」
「この梅田えりかって誰?」
「…貸して」
雅はそう言うと顔を起こし、少し乱暴に茉麻から手紙を奪い取る
そのまま乱暴に開封すると、真剣な目で手紙に目を通す
茉麻は少し驚いた表情でそんな雅を見つめる
視線が何度か上下した後、雅は手紙をパサっと放り投げる様に机の上に置く
と、同時にふーっとため息が漏れる
「まあさん、僕ちょっと家に帰るよ」
「えっ…?」
「有給使うって、言っといて」
雅は椅子を引きずりながら立ち上がると、茉麻に笑いかける
それはいつもの様に決まっていて
そんな雅を見て茉麻はまるで子どもだなと、鼻で笑った