もし電波で繋がってるとか言うんだったら
あの二人は人間じゃないのかもしれないとか思った
アンテナ
舞美ちゃんは抜けてる所もあるけど、流石リーダーだって思わされる
朝だって早く来てるし、皆のお世話も完璧とは言えないけどちゃんとこなしてると思う
そういうところはしっかりしてるのに、
気付いた瞬間にはそんな姿が消えてしまっている
ほら、今日もあと少し…舞美ちゃんがソワソワし始めてるから、あと少し
私には全然分からないし、舞美ちゃん以外の皆にも分からないと思う
だけど、舞美ちゃんには分かるらしい
何でなんだろう?なんて思うけど、今はそれ以上に凄いなーとしか思わない
ガチャリと楽屋のドアノブが回る
スローモーションに見えるのは、私の脳がそれを劇的に見せようとしてるから
ゆっくりゆっくりとドアが開き、次第に見えてくる姿
今日も、今日とてドーンと主張するデカサンが面白いくらいで
服装だって派手で、もう何と言って良いか分からないくらいの存在
それでも態度はどちらかと言うと慎ましやかで
そのギャップが良さなんだとは思うけど
そうやってえりかちゃんの事を観察していると
絶対に一番最初に視界に入って来るのは舞美ちゃん
「えりーっ!!」
「うわぁっー!!舞美、おはよ」
「おはよー」
あの勢いは多分他の人だったら致命傷になってるんじゃないかなって思うくらいで
受け止められるのはえりかちゃんだからなのかな?
えりかちゃん普段は体力も無いし、持久力も無いし…
所謂ヘタレなのに、こういう舞美ちゃん絡みだと、無駄に力を発揮してる
「えへへー待ってたよー」
「ありがと…ウチにしては結構早起きしたんだけど結局この時間になっちゃった」
サングラスを外して鞄にかけると、
えりかちゃんは抱きついている舞美ちゃんの頭をヨシヨシと撫でる
えりかちゃんが来た瞬間からとろけっぱなしだった舞美ちゃんの表情が
更に柔らかく崩れて行く
それを見ているコッチまで、何だか照れてしまって顔が赤くなりそうだ
「あのねー、えりにプレゼントがあります」
「おっ、今日は何だろう?」
「えへへー、あのね今日は…」
ジャジャーンと大袈裟な音を付けて取り出したのは小さな包み
透明のそれから覗くのは小さなマドレーヌ
舞美ちゃんはえりかちゃんの為によくお菓子を作って来る
私たちにも作ってくれるんだけど、
その頻度はやっぱりえりかちゃんに対するのとは比べ物にならない
それに心無しかえりかちゃんへの包装が凝ってある気がするのは私だけじゃないはずだ
「わー、舞美ありがとう!!ちょうど甘いもの食べたかったんだよねー」
「ホント?じゃあえりと私は一心同体だね」
「一心同体…?あぁ、以心伝心ね」
「うん、そう、それ」
私のイメージでは少しだけ舞美ちゃんの方が賢い感じなんだけど
えりかちゃんと二人で居ると逆転してると思う
えりかちゃんが大人だなーって言うか、舞美ちゃんがペットみたいだなって思う
千聖並みに尻尾が見えてしまう程従順な犬みたいだなって思う
「舞美、めちゃくちゃ美味しいよ!!」
「ホント?良かったー」
楽屋中に二人の幸せそうな声が響く
二人は皆に見られてるの気付いていないのかなぁ?
そんな二人に対して、呆れたって言う気持ちと、羨ましいなって気持ちが半々くらい
私は正直、今は羨ましいって気持ちが強いかなぁ…
「おはよーございまーす…って、えりかちゃんずるい!!私も舞美ちゃんに抱きつかれたいかんな!!」
「あーあー、栞菜うるさーい」
「そうだよー、私はえりにしか抱きつきませーん」
二人に気を取られていると楽屋に入って来た栞菜
なーんで、私じゃなくて二人に先に絡むんだよー…
順序逆だよー…
「栞菜、ウチらよりホレ…」
「あー、分かってるって…愛理おはよー」
ちょっと拗ねてしまったんだけど、好きな人からの挨拶は嬉しいもので
私と栞菜も舞美ちゃんとえりかちゃんみたいになれたらなーって
二人みたいに栞菜専用のアンテナが持てたらなって思った