勃発

格好良くいたいって思えば思う程格好悪くなる

難しい事なんて本当は何も無いって言って欲しい



勃発



「あの、すみません」

「はい?」


雅の住む街には珍しく黒くて綺麗な車が通る

見かけに似合わずノロノロと進む車は雅の隣でストップする

すると窓を開けると雅に声をかけて来た


「鈴木さんの家はどこか分かりますか?」

「あぁ、分かりますよ、丘の上なんですけど…この先道分かりづらいんですけど」

「そうですか…」


車の中にはどこから見ても爽やかな青年

仕事帰りでツナギ姿の雅はどうも負い目を感じてしまう

しかし、そんな事を気にせず青年は雅に普通に話しかける


「よろしければ案内して欲しいんですけど」

「あー…丁度僕も向かうんで、良いですよ」

「すみません…じゃあ、どうぞ乗って下さい」


カチャっと車のドアが開き、雅は車内へ案内される

最初は、躊躇っていたものの青年の笑顔に負けて雅は乗る事した


* * * * *


「あっ、そこ左に曲がって見える坂を上ってくれたら着きますよ」

「あぁ、あそこなんですね」

「はい、大きなお屋敷ですよ」

「僕から訪ねるのは初めてで…君は、えっと」

「雅です、街の運送屋で働いてます」


ペコリと雅は頭を下げ、恥ずかしそうに自己紹介をする

青年も頭を下げる


「僕は舞美です、今は医者の見習いです」

「わぁ、凄いですね」

「まだまだ駆け出しですから、凄くはないですよ」


ハハハと二人は笑い合う

雅はまだこの時気付いていなかった


「どうも案内ありがとう」

「いえ、僕も用事があったので」

「そうか…じゃあ、君が先にどうぞ」


車を先に降りて舞美はドアを開ける

雅は何から何までしてもらって申し訳ない、と思いながらも甘える


「じゃあ、お先にすみません」

「いえ、僕の用事なんてどうってことないですから…君は仕事なんだろう?」

「はい…」


コンコンといつもの様に扉を叩く

少しするといつもの様に扉がゆっくりと開いていく

外を恐る恐る覗く様に愛理が顔を出して来る

雅がニコリと笑うと、愛理もそれに合わせて笑顔になる


ここまではいつも通りの事だった

だけど、この後が違った


愛理は雅の後方に見える青年、舞美を見つめる

愛理は少し怪訝そうな表情をして、首を傾げた

しかし、何かに気が付いたのか、見る見るうちに表情が明るくなる


「舞美ちゃん!!」

「えっ…」

「やぁ、愛理久しぶり」


いきなり口を開いた愛理に雅は驚く

そして、愛理が舞美の名前を呼んだ事にも驚く


雅は少しずれて、愛理と舞美の様子を見る

二人の間に流れる、形容しがたい雰囲気に眉を顰める


「あっ、すみません…サインですよね」

「あっ、うん…」


愛理が慣れた手付きでサインすると

雅は帽子を取らずに、ぶっきらぼうな口調で挨拶をする

愛理はそれを不思議に思うが、理由を聞く暇もなく雅は駆け出していた


雅の姿を愛理は眉を下げて見つめる

姿が見えなくなった途端に、愛理は舞美をギッと睨んだ


「舞美ちゃんのバカっ!!」

「えー、久しぶりに会って一番最初に言うのそれ?」

「もう、バカっ!!雅さん怒っちゃったじゃん!!」

「それ、僕関係あるの?」

「知らないよ、もうっ!!」


プンスカと怒りながら屋敷へ入って行く愛理を追いかけ、舞美も屋敷へ向かう

本気で怒った様子の愛理に舞美は困ったなぁーと頭を掻いた