ふたりぼっち

約10センチくらい上を横目でチラリと見る

気付かれないと良いなって思うのは見てたのがバレちゃうのが恥ずかしいから

でもね、本当は見つめ合ってたいって思ってるんだよ?



ふたりぼっち



ブロロローと低い音が響いて目の前を大型トラックが通り過ぎる

トラックだけじゃなくて、もう何台も乗用車やバスも通り過ぎて行った

確かに混雑する様な時間だって言うのもあるけど、他にも理由があった


…そう、迷子だ


知らない場所ではないし、どっちかって言うとよく知った様な場所

結構、頻繁に利用する駅

だけど今、私は迷子って言うか皆からはぐれてしまって、隣には熊井ちゃんが居る

千奈美的には結構困った状況なんですけど、

熊井ちゃんはいつもと変わらないくらいニコニコしている


「ねぇ、ちぃー」

「んー」

「これは迷子だね」


いつもの様にマイペース極まりない熊井ちゃんは

もしかして、楽しんでるんじゃないかな?って思えちゃうくらいだ

まぁ、そんな所も良いなって思うんだけど

少しは危機感とかないのかなーって思う


「ねぇ、熊井ちゃんどうしようか?」

「そうだねー」


やっぱりのんびりとした返事で少しだけ癒されてしまう

迷子になったのは困ってるんだけど

熊井ちゃんと二人ならまぁ、良いかなって単純に嬉しい


そんな事考えて、一人嬉しくなっていると

ポケットの中の携帯が震える


「あっ、キャプテンからメール…」

「なんてー?」

「どこに居るの?って」

「どこってここ、駅だよ」


うん、分かってる、それは分かってるよ…

なんて、言わないで熊井ちゃんに言われたままにメールを返す


でも、いつもよりメールを打つ速さは遅め

どうせなら、もうちょっとだけ熊井ちゃんと二人きりって状況で居たいなって思ってるから

こういう事でも無いと二人だけで居られる機会があんまり無かったし

まぁ、熊井ちゃんがそう思ってるかは分からないけど…


「ちぃ、やっぱメール送らないで」

「えっ?」

「なんか、まだ大丈夫だよ…うん」


熊井ちゃんは剥れた顔で前を見ながらボソボソと呟く様にそう言った

声が籠っていて、聞き取りにくいんだけど

いつもの熊井ちゃんの声より、少しだけ照れてる感じだった気がする…


「もう少し、このままで居ようよ」

「…それ、どう言う意味?」

「だから、二人で居たいなって…」


やっぱり前を向いたままの熊井ちゃん

横顔だから表情の変化は分かりにくいけど

さっきよりちょっとだけ赤くなってる頬がはっきりと教えてくれる

同じ気持ちなんだって、教えてくれる


「うん、じゃあメールしない…だけど、電話かかって来たら出るからね」

「うん、そうしよう…ちぃ、ありがと」

「うぅん、全然」


やっとコッチを見て笑ってくれる

優しく崩れた表情は格好良いのに、可愛くて

この表情も何もかもがキュンと胸に染みて来る


だから…って言うのはちょっと可笑しいんだけど

だから、私は熊井ちゃんの事が大好きで

たまには二人きりで居たいな、なんて思って

それがちゃんと一緒に気持ちだっていうのが、こんなにも幸せにしてくれる

そして、それが二人で居たい一番の理由なのかもしれないなって思った