Luxuries

フワッと漂う君の甘い笑顔はもしかして私にだけ届いているのかな?

そうだったら、それはもの凄く贅沢な事だ



Luxuries



ファーっと欠伸をしながらドアを開ける

欠伸なんてして、気が弛んでるとか言われそうだけど

いくら仕事だと言っても、楽屋でくらいは気を抜いていたい

だから、弛んでいて当たり前なんだって思う


今日は何となくだけど調子が良くて、全体的に上手くいった気がする

ウチ的にはまぁ満足な仕上がりになったと思ってる

何よりも、梨沙子が笑顔で見ていてくれたから

それが本当にくすぐったくなるくらい嬉しかった


「みや、お疲れさまです」

「うん、梨沙子もお疲れ」


先に楽屋に戻っていた梨沙子が

丁寧な言葉遣いで頭までペコンと下げて、出迎えてくれる

ウチがそれに応えると、頭を上げる梨沙子の表情は満面の笑みって感じ


他の人から見たら締まりがない!!だらしない!!

って怒られる様な梨沙子の笑顔は、ウチにとってはかなりヤバい

一緒に溶けてしまいそうになるほどで、

そんな梨沙子と一緒に居る時のウチも締まりがないんだろうな、なんて思う

言葉にするとふわふわって感じで、すっごく気持ちが良い


「あのね、そう言えばね…ほら、コレ」

「なぁに?」

「さっき、みやコレ食べたいって言ってたから、とっておいた」


梨沙子がウチの手を取って、上に乗せて来たのは誰かが差し入れてくれたパンケーキ

ウチの予想によると、それはバナナパンケーキで

バナナ好きのウチとしては、食べておかなきゃいけない一品

でも、今日の撮影の順番が最後だったウチは食べれるか不安で仕方なかった


「ありがとー…」

「うぅん、だってみやの為だもん」

「ホント、嬉しいんだけど…」


ちぃやキャプテンに小さな事で喜び過ぎって言われちゃいそうだけど

こういう小さい事気付いて貰えるってかなり嬉しいんだよって事を二人は知らない


梨沙子から受け取ったそれを手の上に置いたまま、少しだけ眺める

ヘヘへって照れ笑いが出て来て、

小さなパンケーキがかなり貴重な宝物に思えて来る

そんなウチってやっぱり単純なのかな?なんて思うけど

それでも、やっぱりにやけてしまうほど嬉しいんだもん


「みや食べないの?」

「えっ、食べるよ、食べる…」

「私もさっき一個食べたけど、美味しかったよ」

「マジ?わー、食べよー」


包みを開けてパクリと一口かぶりつく

口の中でポロポロと形が崩れて、甘さがフワッと広がる

頬が落ちそうなくらい美味しくて、さっきとは違った笑みをする


「みや、美味しいでしょう?」

「うん、美味しいぃ〜!!これ、食べれて良かったぁ」

「イヒヒィー」

「梨沙子、ありがとっ!!」


ウチが残りもパクパクと食べていると

梨沙子は何かに気付いた様な顔でウチを見て来る

どうしたのかな?と思って、首を傾げると

優しそうに微笑んで、顔を近付けて来た…


「ここ、食べカス…」

「えっ、あぁー」

「いただきます…」


梨沙子は舌を出して、ウチの口元をぺろりと舐めとる

それのせいで、ウチは一旦、思考停止

全てを認識した時には、顔がカァーっと熱くなる


「へっへー」

「もうっ、梨沙子!!」

「美味しかったよ、かなり」

「あー、もうっ!!そう言う事皆の前でしないでよ…」


嫌じゃないんだけど、恥ずかしいって気持ちが強くなる

こういう事フツーにしちゃう梨沙子は可愛いんじゃなくて格好良くて

普段は見られない稀な一面に、また恋に落ちそうになっちゃう

だから、出来ればそう言う事を皆の前ではして欲しく無いってワケだ


ジロジロと感じる皆の視線

張り付くようで居心地が悪いんだけど

目の前の梨沙子はそんなの気にしていないみたいで、かなり幸せそうに笑っている

それを見てると、ウチが小さい事気にし過ぎているみたいで

ちょっとだけ、恥ずかしがっていたのがどうでも良くなって来る


「もう、今回だけだよ許すの」

「うん」

「分かったなら、よろしい」


梨沙子は笑顔のまま頷いて、エヘヘって首を傾げた

そういう小さな仕種とか、笑顔とか

ウチの為にしてくれる全ての事がたまらなく愛しくて

これは正に、贅沢なんじゃないかなって、ウチは思った