そろそろ枕でも飛ぶんじゃなかろうか?
ウチは自分の心配よりも目の前の二人の方が心配だ
Scramble
「昨日も一緒だったんだから良いじゃん!!」
「今日だって、公平にくじ引きだったじゃん!!」
「でも、舞美ちゃんばっか一緒じゃん!!」
「だから、くじ引きだって言ってるじゃん」
どちらかと言うとおっとりしてる二人だと思う
ウチもまぁ、おっとりしてるけど舞美も愛理もかなりおっとりしてると思う
グループ内でも1、2を争うって言っても過言じゃないと思う
それなのに、今はウチの目の前1メートルの所でかなり激しい言い争いをしている
楽屋とかなら止めるんだろうけど、今は出来ない
だって、原因がウチみたいだし…
「今日1日くらい変わってよ」
「嫌だよ、愛理がえりに何かしたら嫌だもん」
「何もしないよ、一緒に寝るだけだって!!」
「それ、ダメ!!絶対ダメ!!」
何にも出来ないから、ウチはベッドに座って漫画を広げる
ファーって欠伸が出て来るくらい暇なワケだ
勘違いだとしても、ウチを巡って言い争ってるなら
ウチの事をこんなに放置しておいて良いんだろうか?
なーんて事少しは思うんだけど、まぁウチには今のところ被害が無いし
漫画の続きが結構気になってたから、それで良いかなって思える
「じゃあ、じゃあ!!えりかちゃんに決めてもらおうよ」
「あー…良いよ、えりは私の事、絶対選ぶもん」
ウチが気持ち良く漫画を読んで爆笑してると
話がワケの分からない方向に進んでいるみたいで、イマイチ飲み込めない
まぁ、所謂とばっちりってヤツなんだろうけど
「えっ、何?」
「えり、今日も私と一緒が良いよね?」
「違うよねー、久しぶりに私と一緒が良いよねー?」
「んー…」
あぁ、そんな事気にしてませんでしたなんて言えない状況だ
二人ともジーッとウチを見つめて来て、選ぶにも選べない
て言うか、どっちでも良いなんて言うのも言えないし
でも正直、静かに漫画を読めるなら、どちらでも良いんですけど…
まぁ、こういう風に好かれるのは嬉しいんだけど
「ウチ、決められないよ…舞美でも愛理でも良いよ」
「ダメ、ちゃんと決めてよ」
「そうだよ、決めて!!」
あー、何かウチが悪者になってる系?
うわぁー、これは真剣に困った状況だ
さっきまで二人で可愛い顔を顰めて、睨み合ってたのに
今はウチにグングンと迫って来ている
「本当に、ウチどっちも好きだからさぁ…二人で話し合って決めなよ…ねっ?」
「…えりがそう言うなら、仕方ないなぁ」
「分かった、えりかちゃんの為に私頑張るね」
妙に物わかりの良い二人は、またウチを放置で白熱した言い争いを繰り広げる
ちょっと面白いなって思って、漫画を横目に見続ける
どうやって決めるかで話し合ってるんだけど、
それですら意見が合わないなんて、いつになったらコレは終了するんだろうか?
じゃんけんでも、あみだくじでもなんでもいいんじゃないかなぁ?
「だから、私の方がえりの事好きだし」
「私、舞美ちゃんよりえりかちゃんとの付き合い長いんだからね」
「でも、地方に行く時はえりとウチは絶対一緒だから、今のえりの事は私の方が知ってるよ」
あぁ、なんと言う事でしょう?
どっちの方がウチの事好きか、そんな事で決めないでよ
恥ずかしいじゃん、ぶっちゃけさぁ…
て言うか、眠くなって来た
だけど、この状態じゃ寝るに寝れないしなぁ…
ウチは枕元に置いてあった携帯を取る
ピピピと操作して着歴からある名前を見つけると通話ボタンを押した
「あっ、なっきぃ?…うん、うん、そうなんだよ…うん、じゃあね」
短い会話
だけど、直ぐに察してくれるのはさすがなっきぃ
ウチよりもやっぱり大人だなーなんて感心しちゃう
二人はウチが電話してる間もギャーギャーと言い合っていて
作戦は上手く行きそうだと、一人ほくそ笑んだ
「あっ、えりどこ行くの?」
「んー、ちょっと自販機にジュース買いに行く」
「一緒行こうか?」
「すぐだから、良いよ…舞美たち何が良い?」
「「ポカリ!!」」
「はーい」
ハハハって笑いながら、部屋を出て行く
ダッシュする程の距離じゃないけど、一個開けて隣の部屋をノックする
なっきぃが苦笑いでウチを入れてくれる
「ホント、ごめんね」
「うぅん、全然」
「あー、これでポカリ二つ買って差し入れて上げて…あと鍵」
「うん、荷物は朝で良いよね?」
「うん」
鍵と1000円を渡すと、ウチは部屋を出て行くなっきぃを見送って
フーッと、ベッドになだれ込んだ
「あっ、漫画忘れた…まぁ、仕方ないか」
枕に顔を埋めると、自然と瞼が降りて来る
ごめん、舞美、愛理、なっきぃ…
ウチ、本当に眠いんだよ…
それでは、おやすみやび…
と、完全に堕ちてしまう一歩手前で、凄まじい音がする
「えりー!!出て来てよー!!」
「えりかちゃん、3人で寝よう!!そうしよう!!」
「えりこちゃんごめん、早貴にはむりだったよぉ〜」
ドンドンとドアを叩きながら、大声でウチの名前とか色々叫んでるけど
ぶっちゃけ、騒音にしか聞こえないよ…
ごめんね、本当に心からそう思ってるよ
他の部屋の皆様、心からお詫び申し上げます
今日だけ我慢して下さい、五月蝿いのは今日だけですので…
明日の朝、一番大変なのはウチだと思いますので
それだけは分かって頂けたら、嬉しいです
ウチはゆっくりと瞼を閉じる
明日の朝の事なんて考えられない
今はただ静かに眠らせて…
それでは再び、皆様おやすみなさい