いい加減にしてっ!!

楽しい事は良い事だ

だけど、何事もさじ加減ってヤツが大切だ



いい加減にしてっ!!


 

ソロリソロリと音を立てずに歩く

あと一歩行けば、最大の難関だ


「あー、キャプテンどこ行くの?」

「どこ行くの、どこ行くの?」


油断してた、って言ったらそこまでなんだけど

こんなに早く気付かれるなんて、一生の不覚だ

この二人に捕まると良い事が無い

言い過ぎかもしれないけど、後々怒られるのは私になる訳だから


「スタッフさんと打ち合わせ…」

「さっきもそれ行ったじゃん」

「今度は舞美もいるの、二組一緒に、って」


私は何一つ嘘を吐いていない

と言うか、下手に嘘を吐くよりもちゃんと言った方が賢明だと思う


それなのに目の前の馬鹿二人、千奈美とみやは疑いの目で見て来る

マジ、バカ。ホント、バカ。

本当に嫌になる…

ガクッとうな垂れそうになると、隣から叫び声が聞こえる


「離してー!!」

「だって、離したら舞美ちゃんどっか行っちゃうじゃん!!」

「どっかって打ち合わせだから!!」


あぁ、あちらさんにも問題児が居るのですね…

あぁ、でも一人ならこちらよりはマシなんじゃ無いでしょうか


私がドアを開けるよりも先に二人が開ける

私も続いて出てみると、隣のドアの所で奮闘中の舞美が見える

腰にギュッと回された腕は栞菜のモノ

ハハハと千奈美とみやは面白いものを見た様に笑っているけど

私は乾いた笑いしか出来ない

お前ら笑ってるけど、同じ事してるんだからな


「ほら、栞菜見て、佐紀いるじゃん、嘘じゃないって」

「浮気だー」

「浮気って、私栞菜と付き合ってないから」


舞美はすでに額や頬にきらりと光る汗が見える

それは栞菜と奮闘した汗であり、困った時の冷や汗でもあるんだろう…


「あっははー、キャプテン見て!!あっちウケる」

「これなら、打ち合わせ出来ないねー」

「いやいやいや…」


もう、何て言うか二人の思考回路が分からないんですけど

私も言う程賢くはないけどさ、この二人には敵いません

完敗です、ハイ…


「もう、栞菜!!」


よく通る声が、栞菜の名前を呼ぶ

私にはそれが天使の声に聞こえる

ありがとう、神様!!ありがとう、愛理!!


「舞美ちゃん困ってるでしょ!!」

「あーあ、舞美ちゃん愛理にバレちゃったから」

「うんうん、そうだよ早く行きなよ」

「じゃあね、舞美ちゃん…また、よろしくね」


愛理の姿は見えないけれど、いつもみたいに眉毛を下げて

困っているのか、怒っているのか分からない表情なんだろう


「ほら、あんたたちも…」

「「えっ?」」


楽屋の中を見れば、梨沙子があからさまに拗ねた表情をしているし

熊井ちゃんがキョロキョロと挙動不審だ


「行ってあげなよ、それが君たちの使命だよ」


ポンと二人の肩を叩くと、顔を見合わせ

一瞬、どうする?と目で話し合った後

笑顔を作って、楽屋の中へ戻って行く

フーッと一息吐くと、隣も同じ様子で


目が合うと、ニッと笑われる

やっと解放されたって言う安心感でドアを閉めようとする


「あっ、佐紀ちゃんどこ行くのぉ?」

「舞美、舞美っ!!」


……


何でこうも次から次へと君たちはやって来るのでしょうか?

少しはキャプテンやリーダーを気遣うと言う事は出来ないのでしょうか?


「「いい加減にしてっ!!」」


打ち合わせ無しにハモった私と舞美の叫びは

確実に魂の叫びってヤツだった