体育の時間

体育の時間


コート上では男子がバスケットをしている

赤のビブスを着たチームがボールを支配している


「佐紀っ!!」


ヤジマくんが大きな声で名前を呼ぶと、清水くんはスッと動きスペースを作る

そこにすかさず、ビュンッと力強くヤジマくんはボールを投げた


周りの皆はヤジマくんのパスに、全力過ぎだろ…と思うが

シミズくんだけは表情を変えないでスッと手を出す

そして、綺麗にキャッチするとボールをポンと1、2どつくと一歩後ろに下がる

その無駄の無い仕種に皆が一瞬見とれてしまった隙にシミズくんはシュートを打つ

ボールは放物線を描き、リングには触れずネットだけを揺らす


「よしっ…」

「佐紀ー!!ナイッシュー!!」

「舞美こそナイスパス」


シュートを決めたシミズくんに駆け寄り、思い切りぐしゃぐしゃと撫でる

それでも、シミズくんの髪はサラリと元に戻る

そして、笑顔で皆とハイタッチをすると、走ってディフェンスの陣形を作った


* * * * *


「えりかちゃん、見た?」

「うん、舞美ヤバいね」

「えー、今のはシミズくんのお陰だよ!!」

「いやー、今のは舞美の判断が良かったでしょ」


隣のコートで同じく体育の授業をしていたツグナガさんとウメダさん

体育が得意でない二人はずっと座り込んで女子を見たり、男子を見たり

女子がワイワイやっているのに比べて、結構本格的に取り組んでいる男子に目を取られてしまうのは当然で

シミズくんとヤジマくんの連携プレーは特に二人の心を鷲掴む


「でも、あのパスを取った時点でシミズくんの方が凄いじゃん」

「シミサキを信頼してる舞美の方が偉い」

「そこで、ちゃんとシュート決めれるシミズくんの方が凄い!!」


キーキーとヒートアップする二人を見ていた教師がコツンと軽く頭を叩くと

二人は口喧嘩を止めにして、教師への反論を開始する


「何、えりまた怒られてるの?」

「舞美…違う、ウチはちゃんとコートの外からバスケットと言うものを」

「そうそう、皆のスーパープレーを見て桃たちは勉強してたのに先生がー」

「そっかー、じゃあさっきの佐紀見てた?凄かったよねー」


ヤジマくんはまだコートの方にいるシミズくんを見る

二人もつられてシミズくんを見る

友達と仲良さそうに笑顔で話している姿を見ると

どう考えてもさっきまでの姿は無い


「あんな所が佐紀の良い所なんだよねー、涼しい顔しちゃってさ」

「あー、舞美はそう言うタイプじゃないもんね」

「んー、でも俺も佐紀も汗っかきだよ」


ヘラヘラと爽やかに笑うヤジマくんにツグナガさんとウメダさんも笑う

シミズくんはそんな三人に気付かずに仲睦まじそうに話している

ツグナガさんはヤジマくんからシミズくんに視線を移し

やはり、笑顔で見つめ続ける


「何か、良いなー」

「おっ、桃もしかして佐紀の事」

「…そうですよー、いいじゃん別に舞美には関係無いでしょ」


ツグナガさんが少し拗ねた様に口を尖らせる

ウメダさんはヤジマくんと「バカっ」と小突いて黙らせる

それでもツグナガさんの目にはシミズくんが映っていて

それは凄く真っ直ぐで、凄く純粋なものだった