「おっ、おはよぉ…夏焼くん」
「あ〜、キッカおはよー」
いつも通り遅刻をギリギリしなさそうな時間に家を出て、学校まで歩く
この高校を選んだのは単位制なのと家から近いって事から
まぁ全部はバンド中心に考えてそうなったんだけど
受験は相当大変だったけど、色んな人の優しさを知ったと思う
「キッカ珍しくギリギリだね」
「寝坊しちゃって…」
今隣に居るのは中学校の時からお世話になりっぱなしのキッカこと吉川友
真面目な性格で頭も良いのに、何故か俺と同じ高校に入った
理由を聞いたら“したい事が出来るから”って答えてくれた
もっと良い所に行けそうなのに
「今から走ってたら体育辛くない?」
「まだ一学期だから遅刻したくないし」
「真面目ですねー」
キッカは部活も一緒で、受験勉強も手伝ってくれた
俺の珍答も丁寧に正してくれて、今の俺が居るのはキッカのお陰
それに顔も綺麗だし、体つきもヤバい
「そう言えば須藤くんたちのクラスと合同だってね」
「うん、まぁさんからメール来てた」
「じゃあやっとご対面だね」
「何が?」
俺の中学からこの高校に来たのはあんまり多く無くて、親しいのはキッカとまぁさんくらい
まぁさんとはクラスが離れたんだけど、体育とか合同授業は一緒らしい
「ほら…久住くんと」
「…誰?」
「そっくりさん」
久住…久住…
思い出そうとしても中々出てこないのは俺の頭の出来のせい
ただ、そっくりさんと言われたら、ちょー身に覚えがある
「一緒なんだ、その…」
「久住くん」
「そう、そいつ」
毎日の様に似てると言われた相手が久住って人らしい
ちょっと楽しみかも…
「キッカ、そいつ知ってるの?」
「うぅん、夏焼くんとそっくりなんて見てみたいじゃん」
「何それ」
「…さぁ、何でしょうね〜」
キッカが笑った意味がどうしても分からなくて
それに気付いていたらどうなっていたかも、まだ分からなかった
* * * * *
こんこんと靴を履く
新しく買ったスニーカーだから、まだ慣れない
「ナツヤキくん?」
「んぁっ?はい」
「へへへっ」
目の前に妙なヤツ、って言うか結構なイケメン
人見知りの俺にいきなり声を掛けて来るなんて良い度胸
なんて、一人詮索しているとヒョイと手を差し出される
「握手、しよう」
「あぁ、はい」
「へへへっ、ありがとう」
ギュッと握られたあとソイツはグラウンドに向かって走って行く
「何アイツ?って言うか俺も行かなきゃ」
* * * * *
「はぁー人多い」
「仕方ないよ、2クラス合同だし」
「それくらい分かってるし」
「みや本当に人見知りなんだね」
俺の後ろからちぃがちょっかいを出して来るのを手で払いながら話す
ちぃは人見知りの俺にしては珍しく最初から打ち解ける事が出来た友達
バドミントン部のルーキーで結構期待されてるらしい
「あっ、アイツ…」
「可愛い子?どれっ?」
「あれ」
「って、男じゃん」
俺が指差した先にはさっき握手を求めて来たヤツ
ちぃは一瞬なーんだと落ち込んだあとに、直ぐ声を上げた
「しかも、久住」
「クスミ?」
「有名人、イケメンって…みや知らないの?お前そっくりサンって言われてるし」
クスミ、そっくりサン
それだけで、と言うかそれで十分って感じ
俺は少し離れた所にいる久住の顔を凝視する
「似てる?」
「うん、まぁまぁ」
「アイツの方がイケメンじゃない?」
「謙遜するなって、イケメン」
ちぃがワーワーと騒ぎ出す
俺はさっきの握手を思い出していた
指先があの独特な感触に、結構大きい手のひら
想像する事は自由だけど、もしかしたらって思うと嬉しくなって来た
「アイツ、仲良くなれるかも…」