『う〜ん』と首を捻ったが、直ぐに笑顔がこぼれて来る
手に握った紙切れの中
硬い表情の君は、どうやったら笑うんだろう?
写真
「…で、これが」
「この前来てくれました」
「そう、僕の仲間のまぁさん。凄く良い人なんだよ」
机の上に広がった沢山の写真
どれも物珍しいものではないけれど、愛理は目を輝かせている
「これは、こっちは?」と矢継ぎ早に聞いて来る彼女に
雅は一つ一つ丁寧に説明をして行く
「とても楽しそうに写ってますね」
「うん、これは仕事先の皆でご飯を食べたときでね、凄く盛り上がったから」
「良いなぁー、そういうの…」
雅は「しまった」と思った
この屋敷から出た事のない愛理にとって、屋敷の外は憧れ
そして、それはどうしても手の届かないもの
だからこそ、雅は愛理を笑顔に出来るが
それは同時に悲しい顔も見なければならない事
「ごめん…」
「どうして謝るんですか?」
「いやっ、その…愛理はその…」
雅は動転してしまい、しどろもどろになってしまう
愛理は不思議そうにそれを眺め、感づいたのか困った顔になる
「そんな事気にしなくて良いですよ…」
「ホント、ごめん…」
「あなたの話聞いてるだけで、楽しいんです」
「良かった」
「こんなんだろうなーって思うだけで、幸せですよ」
愛理はそういって、小さく照れ笑いをした
雅はそれで少しだけ笑顔になる
「いつかさ、一緒にこういう事出来ると思うよ」
「はいっ!!」
「その時は、僕が隣に居てね、愛理は笑ってるの」
雅は嬉しそうに自分の構想を話す
愛理もそれを聞きながら、頷き楽しそうにしている
「そうだ、ジャーン」
雅は思い出したかの様に隣に置いていた黒い物を持ち上げる
愛理は不思議そうに首を傾げる
「カメラ、今日愛理の写真撮ろうと思ってね」
「えっ?」
「今度は皆に愛理の事紹介したいなって思って」
雅は照れ笑いをしながら、俯いてそう言った
それはまるでとびきりの作戦を打ち明けて、ビックリさせようとしているみたいで
容姿に似合わない幼い感じが愛理には新鮮に思えた
「でも、私そういうの…」
「嫌なら、良いんだ…」
「そうじゃなくって、私で良いんですか?」
「愛理しかいないじゃん、ここ」
雅は愛理の言っている事が理解出来ず、ポカンとする
愛理は雅はそういう人なんだなって笑った
* * * * *
「ふぅー、撮っても良いですか?」
「…はい」
ソファーの上に座った愛理にレンズを向ける雅
覗き込んだファインダーから見える愛理はいつもとは違った様子
雅はピントを合わせる事に夢中でそれに気付かない
愛理はそんな雅を見ながら、更にぎこちなくなっていく
「撮るよー」
「はいっ」
パシャ
っと音がして、雅はふーっと息をつく
それで愛理も緊張がほぐれて、次第にいつもの笑顔になる
「出来上がったら、見せに来る」
「何か、恥ずかしいですね」
「上手く撮れてると良いよね」
二人はヘヘへと照れ笑いで笑い合う
ゆっくりとした雰囲気が流れる二人の距離は
前よりも少しだけ、ほんの少しだけ近付いた様に思えた