「…俺、何かしちゃったかな?」
えりかが苦笑いで頬を掻く
それを見て、雅や梨沙子も苦笑いでいるしか出来ない
原因は梨沙子の手を握ったまま、顔を俯かせている愛理
えりかと関係を持ってから彼の顔をしっかり見ようとしない愛理だった
愛理はどうしても梨沙子の陰に隠れて、出てこようとしない
「…先輩は悪くないです」
「いや、どう考えても俺でしょ」
えりかは愛理の事を本気で気にしている
それは愛理の事を愛しているからで、嫌われてしまったなら世界が終わってしまうのではないかと思っている
そんなえりかを見て、雅はどう声をかけていいか分からないし
梨沙子も愛理を必死で説得しようとしているが、それも通じない
「だって、先輩の顔見たら…無理、無理!!絶対無理」
「えっ、みや俺顔なんか変?可笑しい所ある?」
「俺に比べたら、格好悪いけど特に」
雅は鈍感ではあるが、今回は流石にどういう事か分かってしまった
確かにえりかがそれは悪いけど、可愛い事じゃないかと思う
愛理は照れているんだ、と雅はえりかに言おうとする
しかし、笑い事に出来る様な雰囲気をえりかも愛理も出していない
さて、どうしたものか…と考え込む
何よりも愛理が梨沙子の手を離さない限り、自分が梨沙子の手を握れない
それだけは厄介だなと思うから、真剣に二人をどうにかしなければと思う
「愛理、えりかは大丈夫だよ」
「でも…先輩が大丈夫でも、私が…」
雅は「ワオ!!」と叫びそうになるが、場違いな空気でそうも出来ない
梨沙子はまだマジな顔で愛理を心配している
雅一人がふざけていられる状況ではない
「愛理、梨沙子の手離してよ」
「でも、そしたら…」
「あのねー、えりかが多少変態だとしても流石に学校では…ねぇ?」
雅はえりかにそう問いかける
えりかはそれで気が付いたのか、あちゃーと天を仰ぐ
それを見て、梨沙子は愛理に謝り、握られていた手を解いた
「愛理ちゃん、あの時はごめん…」
「先輩は悪くないんです…ただ、私が我が儘だから」
「うん、それで」
「だから、その…学校じゃそういう気分になっちゃいけないし…」
愛理が小声になりながらも、しっかりとえりかにそう伝える
えりかは冷静でいようとしていたのに、その一言で顔を真っ赤にしてしまう
考えていたのとは違った答えをくれた愛理に、どうして良いか戸惑ってしまう
「嫌だった」と言われたならば、誠心誠意謝れば良かったけれど
今の様な事を言われたら、正直誘われているのではって思ってしまう
「あー、もうっ!!」
えりかは小さく叫んで、愛理をギュッと抱きしめる
それを見て梨沙子が「キャッ」と声を出したが、
雅がポカンと頭を小突き、注意する
「そういうの嬉しい、かなり」
「えっ?」
「だって、俺愛理ちゃんに愛されてるって思って良いんでしょ?超幸せじゃん」
えりかは愛理の頭を撫でながら、嬉しそうに目を細める
愛理はそれが少し不思議に思えたが、えりかが嬉しそうにしているので
さっきよりも落ち着いていると言うか、平常心に戻っている
梨沙子も雅を見つめて「良かった」と呟くと、
雅は「帰ろう…二人っきりにさせよ」と梨沙子の手を引っ張った
* * * * *
場所は変わってえりかの家
えりかは鼻歌まじりのルンルン気分で食事の準備をしている
「でも、マジで良かった」
「だって、先輩の事考え過ぎちゃうんだもん」
「いいんだよ、それで…だって、俺四六時中愛理ちゃんの事しか考えてないし」
えりかはハハハと笑い飛ばし完成したチキンライスを皿にモル
愛理はそれを眺めながら、また顔を赤くさせる
それを気にせず手際良くタマゴをかぶせるとえりかはそれを愛理の前に差し出した
「はい、オムライス」
「ありがとうございます」
「って言うか、俺のご飯だけどね」
愛理の目の前に置かれた皿を持ち上げ、えりかは自分の目の前に置く
それを少しだけ物欲しそうに見ていた愛理の頭をポンポンと撫で、隣に座った
「はい、じゃあ一口だけー、あーん」
「あっ、ありがとうございます」
あーんと口を開き一気に頬張る愛理を見て
色々と想像してしまうえりかは、ブルンと一回頭を振った
流石に愛理にそんなことはさせられないと思うが、
親友の雅は恋人にそこまでやらせてると自慢していた
「うー、美味しいです」
「ホント、結構料理には自信あるんだー」
「本当においしいですよー」
少し興奮気味で褒めてくれる愛理
それなのに頭の中はエロい方へ向かっているのが申し訳なくなる
少し苦笑いになってしまうが、それは愛理の事が好きだから故で
と、一人脳内で言い訳を繰り返す
「愛理…口元ケチャップ」
「えっ、どこ?」
愛理に顔を近付け、さりげなく口づける
一瞬の事だから目を閉じなかった愛理は
目をパチクリとさせ、真っ赤になっている
「オムライスより、愛理食べたくなっちゃった…」
「やっ、あのダメです…」
「えー、ダメ?」
えりかはすっかりその気になっていて、愛理が困った顔をしているにも拘らず
色んな場所にチュッと音を立てながら口付けして、手は既に服を脱がせようとしている
「今日は…って言うか、あとちょっとだけ」
「あっ、あーそっか、ごめん」
「ホント、先輩の事嫌いな訳じゃ無いんですよ…」
愛理は申し訳無さそうに謝る
えりかは気にしてないよと、ポンポンと愛理の頭を叩く
気分は確かに落ち込みそうになっているが、
愛理に無理をさせるくらいなら、と思っているのも事実
「あー、もう泣くなよー」
「だって、先輩に嫌われたくないし」
「こんな事じゃ嫌いになれません」
えりかは少し強めの口調で愛理にそう言う
それに二人で笑い合って、もう一度キスをした