×××私と先輩××× 01

「あっ、梅田先輩…」

「愛理ちゃんじゃん、ちょー良いタイミング」


昇降口、少し出た所に座り込んでいるのはえりか

そのえりかを見下ろす様に愛理は立ち止まって、傘を広げた


「もしかして傘無いんですか?」

「ビンゴ、だから入れてくれない?」


愛理がえりかと知り合ったのはつい最近

親友の梨沙子の恋人の友達だって言う事で知り合った

明るく優しいえりかの笑顔に愛理は気付かないうちに惹かれていた


「家、どっちですか?」

「んー、あっちなんだけど、大丈夫?」

「はい、良いですよ」


愛理はえりかの言葉に快諾する

えりかは喜んで立ち上がり、制服のズボンを叩き付いていた砂や埃を落とす

愛理はそんなえりかもちゃんと入れる様に傘を高く持ち上げる


「俺、持つよ…ホイ」

「ありがとうございます」

「愛理ちゃんと初相合い傘」


えりかは何の気無しにそんなことを言う

しかし、その一言に愛理は嬉しくなってしまう

好きな人と一つの傘に一緒に入る、ただそれだけの事ではあるのだけれど

“相合い傘”と言う一言だけで、特別な物に変わる


「愛理ちゃん、こっち側来なよ」

「えっ?」


えりかが空いている方の手で愛理の手を引くが少し遅かった

たまたま車道側を歩いていた愛理に車が通り跳ねた水が思い切りかかってしまう

それでなくても傘から滴り落ちた水で濡れていた愛理は

更にビショビショになってしまう


「うわぁー、ごめん…えっと、タオル俺のバッグの中にあるから」

「大丈夫です、私もタオルはありますから」


えりかは愛理の言葉を聞かないで、バッグからタオルを取り出し愛理に渡す

愛理は受け取ってしまったからには使わない訳には行かなくなり

申し訳無さそうにえりかのタオルで濡れた部分を吹き始める


「大丈夫、寒くない?」

「大丈夫です…ックシュン」

「大丈夫じゃないじゃん…ごめん」


えりかは頼り無さそうに眉を下げ、愛理を見る

愛理はそんなえりかを見て、優しいなーって場違いな事を思う


「あ、俺んちもう直ぐだから、なんか着替え貸すよ」

「いえっ、それほどの事じゃないんで…」

「ダーメっ、風邪引いたら大変でしょ」


えりかが妙に真剣な顔で愛理を諭す

愛理はそんなえりかに逆らえず、うんと頷くしか出来なかった


* * * * *


「どーぞー」

「おじゃましまーす…」


えりかの家はえりかが言った通り学校から直ぐの所にある学生用のアパート

えりかはそこに一人で暮らしていた


「狭くて、汚いから気をつけてね」

「えっ、綺麗ですよ」


玄関からリビングに上がって部屋全体を見回す愛理

どちらかと言うと物が少なく、部屋に置いてあるものも綺麗に整頓されている

確かに広くはないが、どちらかと言うと生活感が感じられない程えりかの部屋は片付いている


「…って言うか、一人暮らしだったんですね」

「実家遠いからねー、大変で…はい、これ着て良いよ、大きいと思うけど」

「ありがとうございます」


えりかが放り投げたシャツを受け取り愛理は着替えようとする

が、えりかがそこにいるから気になって着替えられない


「あっ、ごめん…俺、外いるから着替えたら言って…あと乾燥機は洗面所にあるから」

「本当に、いろいろすみません…」


えりかが部屋から出て行ったのを確認して愛理は着替え始める

愛理が思っていたよりも豪快に水を被ってしたのか、下着まで濡れている


「どーしよ…」

「愛理ちゃーん、着替えた?」

「あー、もうっ!!先輩だって着替えたいはずなのに…」


愛理はとりあえず、シャツだけ着替えて制服を乾燥機に入れた


「先輩、だいじょーぶでーす」

「はいはーい…そこにあるシャツ取って」

「あっ、はい」


ソファーの上に置いてあった黒いシャツをえりかに渡すと

えりかは愛理が居るにも関わらず着替え始める


「あっ、ごめん…まぁ、サービスショットだと思って」

「……」

「へへ、もう他に濡れてるのない?乾燥機回すけど」

「大丈夫です」


えりかが自分の制服や濡れたシャツを持って部屋を出て行く

愛理は顔が赤くなってはいないかと、心配になって両手で顔を覆った


* * * * *


「それにしても酷い雨だねー」

「ですねー」

「もうちょっと落ち着いてから帰って良いよ」

「邪魔じゃないですか?」


えりかがあまりにも優しくする物だから愛理はどんどん不安になる

好きな人からこんな事をされたら普通は誤解するものだが、

愛理は性格上逆に不安になってしまう

迷惑をかけて嫌われてしまわないかとか、困らせてしまってるのではないかとか


「ぜーんぜん、だって俺愛理ちゃんの事好きだし」

「…」

「あれっ、照れちゃった?」


えりかが笑いながら愛理の顔を覗き込む

愛理は少し仰け反り、えりかから離れようとする

が、その瞬間愛理は固まってしまい動けなくなった


愛理の唇にえりかの唇が重なったからだ


「ちょ、先輩あの…」

「俺好きって言ったじゃん、愛理ちゃんの事」


一度離れたが、また重なる唇

えりかは愛理の口内に舌を入れ今度は深く繋がる

えりかはそのまま愛理の腕をキツく掴み、逃げられない様にする


角度を変えてはわざと音を立てる様にえりかは愛理に吸い付く

愛理はえりかにされるがままで何も出来ずにいる

ただ、ずっとキスされたままだから苦しくなりえりかをドンドンと叩いた


「あっ、ごめん…」


えりかは我に返った様に愛理に謝り、口元を手で覆う

しかし、目は心配そうに愛理を見つめている

そんなえりかに気がついたのか愛理は慌てて笑顔を作る


「あの、嬉しいです」

「えっ?」

「私も好きでした、この前からずっと」


愛理が弱々しく笑いながら、えりかにそう告げる

えりかはそんな愛理をたまらず抱きしめる

愛理は嬉しそうに目を細め、えりかの腕の中に収まった


「本気で?」

「私嘘、吐けませんよ」

「うあー、マジかぁ…て言うか、体冷たい…」


えりかはそう言ってニヤリと笑う

次の瞬間には二人はまた深く深く繋がっていた