It's drowned

一か八かでも勝負に出てしまう私の性格

それすら上手く利用されて、乗せられて

深く深くに溺れてしまう


It's drowned


土曜日の今日は朝練だけで終わって、午後からは自由練

その後に夕方から学校の近くの焼き肉屋さんで高校の部活の新入生歓迎会が開かれている

女子校の陸上部とは言え、運動部の中では結構な大所帯だ

しかも、運動をしているから皆大量に食べる

だから、新入生とかそんなの関係無く、皆で盛り上がっている


私もその輪に入ろうと思っていたんだけど、

上手く入り切れず一人黙々と肉を焼いてはご飯を食べ

って、そんなことを繰り返していた


…時々そう言う事がある

『舞美は良いよ、自分の事頑張って』って、どうも遠慮されているみたいで

だけど、それに私はどう対応して良いか分からなくて

小さな疎外感を感じてしまう事がある


* * * * *


歓迎会は滞り無く終わって、皆何故だか酔っぱらっている様な雰囲気ではしゃいでいる

私はさっきからの流れで私は一人ポツンと離れた所を歩いている


チョンチョンと肩を叩かれる

うん?と思い、振り返ると私より幾分か小さい子がそこにいる


「先輩、先輩も一人?」

「うん…って、名前なんだっけ?」

「有原栞菜…栞菜で良いですよ」


栞菜はニコニコとしている

学年で言えば2つしか変わらないのに、私の何倍も幼く見える

それは私のせいでもあって、栞菜のせいでもあるんだろうけど


そんな栞菜も皆の輪から離れ、一人で歩いていたみたいだ

小さな一致なんだけど、私はそれが嬉しくなる


「何かさー、乗り遅れちゃって」

「そうなんですかー…私はちょっと着いて行けなくって」


栞菜は苦笑いで意外な事をぶっちゃけた

さっきまで私が気付かないくらい皆に溶け込んでいたんだと思う(如何せん私は一人だったから真偽は分からない)

でも、見るからに栞菜は皆に気に入られそうな感じだし、どうしたんだろうって心配になってしまう


「ホントに?私の事なら気にしないで皆の所行って良いんだよ」

「良いです、私先輩と話したかったし」

「ホント?」

「ホントですよ、いっつも先輩の事見てましたから」


栞菜は笑顔でサラリとそんな事を言ってのける

それが本音なのか、所謂口説き文句なのかは分からない

だけど、栞菜の笑顔の後ろに真剣さが隠れていると思う

そういうのが何でだか私には分かってしまう


私はそんな栞菜に対して、張り付いた笑顔で困ってしまったとバレバレだろう

栞菜は笑顔は笑顔なんだけど、さっきとはちょっと違う

まるで、私を上手く罠に嵌める事が出来たと言った様な感じだ


…でも、そうは行ってないと私は思う

て言うか、そう簡単に上手く運ばせない

何と言うか、雰囲気的に勝負みたいになってくると負けられないなーって思う


「栞菜は口が達者だなー」

「えー、本気ですよ…じゃなきゃ、わざわざ声かけませんよ」

「じゃあさー、さっき話しかけてくれても良かったじゃーん私結構寂しかったんだぞ、とか言って」


私は極力、栞菜のペースに飲まれない様にする

先輩の威厳なんて関係無い

なんとなくなんだけど、私の脳が多量の危険信号を分泌している

だから、私はかなり神経を尖らせて、栞菜と話をする


「だって、今の方が良くないですか?」

「何が?」

「先輩の心の隙間?を埋めるには…」


あぁ、やっぱり栞菜はかなり口が達者なんだ

そう冷静に判断している私がいるのに、

栞菜の言葉を純粋に嬉しって思っている私もいる


「だから、本当に先輩が寂しいなって思う時は、私が隣に居てあげますよ?」

「ホントに?」

「はい、ホントに…じゃなかったら、こんな臭い事言えませんよ」


こうやって、栞菜が言ってくれるのは本当に嫌な気はしない

もし、それが口からでまかせの嘘だとしても

そんな事を私に言ってくれる人ってそんなに居ないから

だから、私の中に欲望が生まれて来る


“栞菜を独り占めしていたい”


だから、私は賭けに出た

…どうにかこの子を手に入れる為に


「ねぇ、栞菜…」

「はい?」

「抜け出そう、二人で…」


栞菜は一瞬驚いた様な表情を見せたけど、直ぐに人なつこい笑顔で頷く

酷く艶やかで、酷く妖しく、全てお見通しだと言わんばかりの笑顔


やはり、私は栞菜の罠に嵌ってしまった

それは海の底まで続く様な深い深いもので

私はどうやら溺れる様に嵌ってしまった