So sick …

出会ってしまったから、好きになった

出会ってしまったから、苦しくなった


so sick …


「梅田、お前また髪の毛明るくなったなぁー」

「センセ、それマイケル・ジャクソンに白くなったなーって言う様なもんですよ」


昼休みの職員室は、案外人の出入りが多い

先生に質問しに来る生徒、先生に頼まれごとをした生徒、先生からありがたい言葉を貰う生徒

愛理はたまたま友達について来ていた

その友達が先生と話している時に、手持ち無沙汰になったので職員室の掲示板をずっと見ていた


その隣にえりかは居た

居たというか嫌々ながら説教を食らっていた


「まぁ、そんな自由にしたいなら授業くらいはちゃんとしろよ」

「いやぁ…頑張ってみます」

「“頑張ってみます”じゃなくて、頑張りなさい」

「うぃー」


聞こえて来るその会話

さっきまで教師の方は結構真剣に話をしていたのに、今はもう軽口程度になっている

愛理はそれが少し可笑しくて、ププッと笑ってしまった


「ほら梅田、お前中学生にまで笑われてるぞー」

「先生の方でしょ、それ」

「あっ、すみません…」


笑ったのを聞かれてしまい、失礼だったかなと愛理は謝る

ぺこりと下げた頭の上に何か暖かい感覚

ポンポンとされて、頭を上げると茶色の髪の人が笑顔で愛理をみていた


「まー、良いって事よ」

「お前がそう言う事言うから笑うんだろうが」

「えー、堅物より面白い人の方が好きだよね?」

「えっ?」


ニコニコと変わらない様子のその人と、困りきった顔の教師

それに少し混乱し切った愛理

どうして良いか分からず、逃げ出したい気持ちが膨らんで来た愛理は

いつもより垂れた眉を更に下げて、お手上げ状態


「愛理、終わったよー」

「あっ、りーちゃん…」


丁度良いタイミングで友達…梨沙子が愛理を迎えにやって来る

それは愛理にとっては天からの助けの様で、愛理は所構わずその子に抱きつく


「愛理どうしたの?」

「うぅん、何でもないけど…」

「そう?じゃあ行こうか」

「うん…失礼しました」


歩き始めた梨沙子の隣で、振り返り愛理は教師と茶色の髪の人に頭を下げた


* * * * *


「愛理、梅田先輩と知り合いだったんだ」

「えっ、誰?」

「梅田えりか…さっき話してたじゃん」


さっき話していた人…梅田先輩と梨沙子は言った

そう言えば、教師も何度か“梅田”と言っていたっけ


「知り合いじゃない、知り合いじゃない…りーちゃんは知り合い?」

「みやの友達」

「夏焼先輩の?」

「そう…二人はこの学校の高等部の問題児」


“問題児”と梨沙子は普通に言ってのけた

確かにこの学校の規則は厳しいはずなのにやけに明るい茶色の髪だった


しかし、愛理は“問題児”と言う言葉がその人に似合わないと思った


「そうなんだぁ…」

「いい人なんだけどね」


うん、と愛理は頷いた

“いい人”そっちの方が似合うと愛理は思った

さっきの笑顔を思い出すと、その考えは更に強くなる


“ドキッ”


「えっ?」

「んっ、愛理どうかした?」

「いや、何も…何か変な音しなかった?」

「えっ、聞こえなかったけど」

「気のせいかな?」


愛理はキョロキョロと周りを見渡すけど、どこも変わった様子ではない

さっきのは何だったんだろう?と思うが、分からない

変なの、私…と思うが、何でも無かったんだと思い梨沙子と話を続ける

それはいつもと変わらない、普通に過ぎて行く

そのはずだったのに、直ぐにまた変わってしまう


「あー、さっきの子!!」

「えっ?」


後ろから聞こえた声に振り返ると、そこにはさっきの茶色の髪の人

基、えりかが立っていた


「あっ、えっと…」

「って、声かけてみたけど何にも無いんだけどね…」


えりかがヘラリと笑う

それを見てしまうと愛理も笑うしか無かった


「あれっ、隣に居るのは梨沙子じゃん」

「気付くの遅ーい」

「ごめん、ごめん」


愛理たちに近付いて来て、笑顔のままで梨沙子に話しかける


“ドキッ”


愛理にまたさっきの音が聞こえる

話している二人には分からないくらいの動作で周りを見渡すがやはり何も無い


梨沙子たちは何も無かった様に話を続けている

えりかも普通にしているし、さっきと変わらない笑顔だ

その笑顔はどこか蕩けそうな雰囲気で、愛理は少し和んでしまう


“ドキッ”


一人、和んだ瞬間にまた音がする

何か病気なのだろうか?と少し不安になってしまう

原因が分からなくて混乱しそうなのに、しかし、どこか浮かれた気持ちになっている自分に気付く

変な矛盾だ、と愛理は思う


「じゃあ、俺次の授業出ないと卒業出来なくなるから行くね」

「頑張ってね」

「うん、梨沙子も…それと愛理ちゃんだっけ?も頑張ってね」


えりかが愛理の方を向いて、その明るい笑顔を見せた


“ドキッ”


「あっ、はい…」


愛理は目を思い切り見開いて、そのえりかを見つめた

あぁ、病気なんだこれは…と悟った


「愛理、私たちも行こ」

「うん、行こ…」

「…なぁんか愛理今日調子悪くない?」

「うん、何かね…病気みたい」


愛理は梨沙子にそうボソリと呟いた

梨沙子はそれを聞いて少し落ち着かない様子で大丈夫かと尋ねていたが、愛理の耳にそれは届かず

ずっと“ドキッ、ドキッ”っと鳴り続けていた