Sunday Morning
Suddenly I Know …
The Only One I Know
「起きてー」
ベッドの上には大きな布団の塊
それに包まれているのは大きな体を小さく丸めたえりか
休日のえりかは大体こんな調子だ
前日の夜は遅くまでゲームをしたり、漫画を読んだり、時々誰かと遊びに行ったり
そして、朝と言うよりも昼過ぎに起きて何かをしたと言えない様な生活をしてその日を終える
愛理はそんなえりかの姿を見て一瞬優しく微笑むものの、すぐさま大声を出して起こそうとする
しかし、そんな事なんてお構い無しにえりかは微動だにしない
愛理はそれでも諦めないで起こし続ける
「もー、えりかちゃん起きてってばー」
「んー」
やっと聞けたえりかの声は寝ぼけてますと言わんばかりのはっきりしない声
普段なら愛理はそんなところにも和んでしまうのだが、今日はしない
今日はちゃんと目的があって起こしているのだから
「起きてよー」
「んー…愛理ぃ?」
名前を呼ばれて少しドキッとしながらも愛理はえりかの寝ているベッドの縁に寄りかかり、えりかの様子を確認する
まだ布団に隠れたままなので、えりかの様子は確認出来ない
「そうだよ、愛理だよ」
「ホントー…」
「うん」
何故か疑いを持っているえりかに愛理だと知らせる為に悪いと思いながらも愛理は布団を剥いだ
そこにはいつもからトロンとしている目を更にトロン眠たそうにしているえりか
その表情はどこか微笑みを浮かべ、まっすぐに愛理を見つめている
「ホントだ、愛理だぁ」
「ホントだよぅ」
「何で居るのー?」
「約束…」
* * * * *
愛理は予想はしていたが、実際にえりかが覚えていなかった事にショックを受けた
約束というのはこの前の木曜日にえりかが言ってきたもの
最近勉強ばかりで疲れたと言ったえりかに愛理が「どこか行きたいなぁ」と漏らしたら
えりかが「週末あたりどっか行こうか」と誘ったのである
愛理は幼い頃からえりかの背中を追いかけてきた
最初は近所の優しいおねえちゃんという感覚だったが次第にそれは変わっていった
えりかは背が高くスタイルが良いし、顔も良い
性格だって少し優柔不断なくらい穏やかで、嫌な所が思いつかない
そんなえりかに抱く気持ちは言わずもがなで、愛理は自覚した時にどこか“やっぱりなぁ”と思う所があった
そんな思いを寄せているえりかが誘ってくれたのだ
今までもそう言う事は何度かあったが、大体他にも友達が居る事が多かった
「ホント?」
「うん、どっか良い所行こうよ」
「…二人で?」
「二人が嫌なら誰か誘っても良いよ」
「うぅん、嬉しいっ!!」
だけど、今回は二人だけ
何かが起こってもあっても愛理は約束を守らないと、と思っていた
ただ、想定出来る範囲での“何か”がえりかだった
ある程度予想が出来ていたからか、愛理は今日早めにえりかの家に来ていた
* * * * *
「うっそー覚えてるって」
えりかは目覚めたばかりでまだ覚束ない口調でそう言った
愛理はそれを恨めしく思うと同時に、約束を覚えていた事に嬉しくなった
えりかがんーっと寝たままの姿勢で伸びをする
それをベッドの縁から、間近で見ている愛理は純粋にえりかの事を可愛いなと思った
「どこ行きたい?」
「それは考えてなかった…」
「そっかぁー…あっ、じゃあ良い所見つけた!!」
えりかの声は次第に普段のトーンになって来ている
目、ちゃんと覚めたんだなと思って愛理は立ち上がろうとする
その瞬間えりかに腕を引っ張られた
「……っ!!」
「んー、あったか〜い」
少しの衝撃と痛みが体中を走った
それらが全身を駆け巡り終えた時に愛理はえりかのベッドに引きずられたと悟った
驚いて、嬉しくて、恥ずかしくて、緊張する
そんな思いでいっぱいになった愛理はどうして良いか分からずにえりかの腕に抱かれたまま身動きが取れない
「良い所でしょー、このベッド」
「…えりかちゃん、まだ寝ぼけてるの?」
「さぁねぇー…」
えりかの声にふざけた調子がないのは愛理には分かった
それはずっと聞いて来た声だから、確認しなくても明確だ
「愛理だけだから…」
「えっ…?」
「今日は二人きりだから、行けるでしょこんな所…」
愛理は返事はおろか、頷く事も出来ず固まってしまう
えりかはと言うと何事も無かったかの様に愛理を抱いたまま
「ねぇ、えりかちゃん?」
「んー?」
「他の人にはしてない?」
「うん、愛理だけ…愛理にだけ」
えりかの優しい声が降って来る
愛理はそれだけ聞くと、嬉しさに目を細めた