朝の教室にて

朝の教室にて


「あっれー、無い…」


昇降口を入ってすぐ、事務室の前の鍵掛け

ツグナガさんは自分の教室の鍵を取ろうとするものの無い事に気がつく


学校から近いせいか、毎日一番最初に学校に着くツグナガさん

鍵を取って、教室を開けて、空気の入れ替えをするのが日課になっていた


それが今日は鍵が無い

誰かが先に来たんだろう、そう思い教室へ向かう事にした


* * * * *


ガラガラっとドアを開く


おはよーっと元気に入って行こうとすると目に入って来たのはシミズくん

耳にイヤホンを入れて、左手で頬杖付いて、目は閉じられた状態

寝てるのか、寝ていないのか分かりづらいけど

だからこそ、寝ていたら起こしたら申し訳ないと思って、

そこまで出かかっていたおはようを飲み込んだ


シミズくんの席は真ん中の列の前から2番目で確か後ろは舞美だった

と、ツグナガさんは思いながら自分の席へ向かう


ツグナガさんの席は窓側から2列目の後ろから2番目

背の低いツグナガさんにとっては結構辛い席


教室の前側から行っても、後ろ側から行っても、

シミズくんを通過して行かなければならない

起こさない様に、音を立てない様にソロリ、ソロリと歩く


横目にシミズくんを見てみると、さっきから微動だにしていない

やっぱり寝ているんだ、と思いながら足を進める


油断してたワケじゃない、これはもうある種の癖でしかない

アッと思った瞬間にツグナガさんは豪快に転けてしまった


ドッスーンと大きな音を立てる

ヤバい、起こしたかもと思った瞬間だった


「んっ…えっとー大丈夫?」

「ごめぇーん」


イヤホンを取り去って、目を擦りながらシミズくんが声を掛ける

ツグナがさんは苦笑いで対応するしか出来ない

シミズくんは微塵も迷惑そうな顔をしないで、ツグナガさんの心配をする


「本当によく転けるね」

「…もうっ、笑わないでよ」


立ち上がりながらツグナガさんはそう言い返す

シミズくんはいつもの余裕の笑みとは違った、いたずらっ子みたいな笑みを見せる


「ごめん、でも凄い音だった」

「寝てたでしょ?起こしてごめんね」

「いや、起こしてもらえて良かった」


そう言ってシミズくんは机の上にあったプリントを持ってヒラヒラと見せる


「宿題、途中だったから」

「そっか…」

「このまま寝てたら終わらなかった」


プリントをまた机の上に置き、ペンを持つ

一回クルリとペンを回して、プリントに向かう


「あっ、あのさ」

「何?」


ツグナがさんがシミズくんの席に近付いて、プリントを覗き込む

プリントに顔を近付け凝視するツグナガさん

顔を上げたと思ったら、シミズくんの方を向き満面の笑みを見せる


「やっぱり、ココ解けてる…ねぇ、教えてくれない?」

「ココ?あぁ、良いよ…」


ツグナガさんは隣の席から椅子だけ持って来て、シミズくんの机に向かう


「ココはね、この文を受けるからここで切れて、…ってどうしたの?」


シミズくんはそんなツグナガさんを確認すると説明を始める

しかし、ツグナガさんはプリントではなくシミズくんを見ている


「いや、髪サラサラだなって思って…」

「…で、こうなる。終わり」

「あっ、待って…聞いてなかった」

「知りません」


説明を終えるとシミズくんは残っていた問題を解き始める

ツグナガさんはオロオロとしてしまう


「ごめん…」

「嘘デスよ…ちゃんと聞いて下さいよ」

「うんっ!!」


シミズくんは仕方ないといった感じでツグナガさんを軽くペンで小突いた

その優しい表情にツグナガさんは何だか分からないけど、嬉しくなった