花火

時々荷物と一緒に届けられる様になった手紙

特別な事は何一つ書いていないのだけど、愛理にとってそれ自体が特別だった


* * * * *


「はいっ、サイン」

「ありがとうございます…それではまたお願いします」

「お疲れさま、毎回ありがとう」


雅が帽子を取り頭を下げ挨拶をする

その爽やかさにお客になった人は皆、労いの言葉をかける

雅はそれに対しても爽やかに対応をする


「はい、ありがとうございます」

「じゃあ、また今度もお頼みするわね」


客は雅がもう一度頭を下げると、荷物を持って屋敷の中へ入って行った

雅はすぐに立ち去らないで、少し屋敷を見上げる

小さくではあるけれど、中から聞こえて来る声に耳を傾ける


うん、ちゃんと届いたそう呟くと雅は脇目も振らずに丘を下った


* * * * *


「ウフフ…」


封筒にあまり上手とは言えない字で書かれた自分の名前を愛理は人差し指でなぞる

愛理は落ち着きの無い様子で何度かそれを繰り返す


凄く優しい目笑ってくれて、突然のプレゼントを持って来た運送屋さん


「み・や・び…」


一字ずつ確かに、雅の名前を口にする愛理はどことなく顔が赤い

そのままの顔で、ゆっくりと封筒を開ける


中はやはり上手いとは言えない字が並んでいる

それを見て愛理はまた小さく笑った


内容は愛理の見た事の無い世界が綴ってある

それを読むのは楽しく、興奮出来る事なのだが

愛理は少しだけ浮かない表情をしてしまう

実際にそれを経験する事が出来ない悲しさからだ


でも、その手紙からは雅の一生懸命が切に伝わって来る


雅は沢山の花を持って来てくれた時に

愛理が喜んだ事を覚えていてくれて、それ以来ずっと花の写真を添えてある

そういう小さな気遣いも愛理にとっては嬉しくて、悲しい事なのだ


「えっと、今日の夜窓から外を見て…」


今日の手紙の一番最後にそう書いてあった

愛理は何でだろう?と思いつつも日が落ちるのをじっと待つ事にした


* * * * *


「何があるんだろう?」


愛理は窓を開け放して、ずっと待っている

自分の家の外の事をほとんど知らない愛理にとってそれは凄く楽しみな事であり

同時に不安な事でもあった


ふぅーっとため息を吐いた瞬間だった

ドーンと大きな音が聞こえた


愛理は何が起こったのかと不安になり部屋の中を見渡してみるが

これと言って変わった所は無い

しかし、確かに音は聞こえた

もしかして外で何かあったのだろうか?そう思い窓から少し身を乗り出してみる


ドーンっ!!


愛理が見たのは黒々とした夜空に舞う大輪の花

赤や黄色、緑に橙


「きれー…」


雅が見せたかったもの

愛理が初めて知った外の世界

それはとても鮮やかで忘れられないものとなった