「ねー、キャップ?」
「はいはい」
「ウフフ、あのねぇ」
桃は健気だと思う
私に比べたら少しでも好きな人に構って貰えるだけ、良いけど
かなり頑張ってあの調子だと、ちょっと可哀想に思える時がある
「あんたさぁ、早く準備してよ」
「えー、後でするから話聞いてよぉー」
だから、私は桃の気持ちが分かるし、ここは桃を手伝ってあげなきゃって思う
今、楽屋には私とみやと桃とキャプテン
私がみやを連れて、外に行けば桃はキャプテンと二人っきりになれる
それよりも、私がみやと二人っきりになれるじゃないか!!
名案を思い付いた所で、私はみやの服の袖を引っ張った
「ねー、みや」
「袖引っ張らないで」
「ごめん…」
「良いから…で、何?」
「あー、あのね」
みやをどうにかして確実に外に連れて行けたら、私の仕事は終了だ
あとは桃が自由に頑張ってくれたら、私は大満足だ
「ジュース、飲みたい」
「あっそ、買って来たら」
「いや、この前お菓子いっぱい貰ったからお礼に奢ろうかなーって」
「あー…マジっ?」
「うん」
みやは少し訝しげではあったけど、座ってたソファーから立ち上がる
キャプテンたちの方を見て「ごめーん、梨沙子とジュース買って来る」って言うと、私の手を引いてくれた
楽屋を出るとキッと少しキツい目で見られる
あれ、何か変な事したっけ?
「あんたさー」
「はっ、はい…」
「分かりやすいよね」
「えっ…?」
「まぁ。それも優しさだとウチは思うよ」
キツい目付きだったのが、気付けばかなり優しい表情
私は桃たちの事なんて忘れて、みやに夢中になっていた
* * * * *
「キャップー」
「あー、もうっ!!さっきからなんなのさ」
「二人だけだよ、イチャイチャしよー?」
梨沙子とみやが出て行ってから、なんとなくこそばゆい雰囲気が流れている
桃は結構所構わず行動に移して来る人間だ
それに、ストレートに気持ちを伝えて来る
私にとってそれは嬉しい事であり、時々すごーく困る事だ
素直に好きって言っても良いかなって、思う時もある
その場の雰囲気で私も口をつい滑らせてしまいそうになるけど
調子に乗ってアレコレと話を大きくされるのは嫌だ
私はどちらかと言うと落ち着いた感じで居たいんだ
「…あのさ、桃」
「なぁに?」
「嬉しいよ、嬉しいけど…」
さっきから少しだけ、少しだけなんだけどドアの外が騒がしい気がする
多分、梨沙子は桃に気を使って外に行ってくれた、可愛いもんだ
みやはそれを分かってるはずないだろうけど、梨沙子の可愛い我儘に付き合ってあげたんだろう
多分、それでもそんなに時間がかかる訳ないから、もう帰って来る頃だろう
…と言うか、確実に外に居る気がする
「多分、今二人だけじゃない」
「えー、桃とキャップしか居ないよー」
「いや、居る…」
私たちがドアの方を一斉に見ると、渋々と言った感じで二人が入って来る
エヘヘって感じで笑う二人を見て、私はため息を吐くしか出来なかった
梨沙子が桃の私への気持ちに気付いてる事を私は知ってる
ただ、もう少し頑張って欲しい
要するに私の気持ちにも気付いて欲しいのだ
「もうっ、梨沙子のせいでバレたじゃん!!」
「違うもん、隠れて見ようなんて言わなかったら、桃とキャプテンはいい雰囲気だったもん!!ねっ、桃?」
二人が入って来た楽屋は、さっきまでとは変わって完璧にお祭りムード
三人はギャーギャー騒ぎ出す始末
「あーぁ、残念だな…せっかく二人だったのに」
「キャップ、何か言った?」
「いや、何にも」
聞こえるか、聞こえないかの声で呟いた
遠回しの告白はいつになったら、桃に届くだろうか?
そんな事考えてみるけど、それは当分先の事だろうなって思った