素直

「みや、あのね、えっと…好きっ!!」


楽屋でボーッと雑誌を読むみやの前に仁王立ち

もう何度目かになる一世一代の告白

私は毎回本気で、嘘偽りの無い気持ちを、それはもう命懸けでぶつけている


ただ、みやにそんな事は全く通用してこなかった

だって、みやは鈍感で照れ屋で、天の邪鬼で…要するに素直じゃない


みやがそんなんだし、私はかなり必死だし

最初は皆も見守ってくれていたけど、何回も同じやりとりをした今となっては恒例行事

私がどれだけ頑張って声を張り上げて告白しても、聞こえなかったかの様にシレッとスルーを決め込む、

そこには優しさの欠片も無い


今もそう…私が頑張ってみやに好きって告白してるのに、皆がワイワイ騒いでるせいで雰囲気も何もあったもんじゃない


みやが私の方を見上げたって事は告白は聞こえていたみたい

まぁ、ちゃんと聞こえているのだけが幸いだと思う


“…もうっ、ちぃ黙ってよ!!”って、怒ろうとした瞬間だった

一気に楽屋がシーンとなる



「あぁ、うん…ウチも梨沙子の事、好きだよ」



緊張で堅く結ばれていた口が、ポカーンとだらしなく開く

それは私だけじゃなくて、楽屋に居たみや以外のメンバー全員がそうだ

フリーズ状態で私とみやを見つめる


だって、いつものみやは“あっそ”とか“うっさい”とか、

そういう乱暴な言葉で、私の気持ちを無かった事にするのに…


そしてその後、桃が“みーやんは照れてるだけだよ”って、

少し頬を赤く染めたみやを指さして私を励ましてくれるのに…


それが昨日まで…と言うか、さっきまでの“当たり前”の楽屋の風景なのに…



「梨沙子、口開いたまま」

「あっ、うん…みや?」

「なに?」

「みやだよね?」


口だけじゃなくて、目も限界一杯に見開いていて

要するに私は驚いた顔のままでみやを見つめる


「はぁっ?ウチはみやじゃん」

「あっ、うん…ごめん」


“梨沙子、おっかしー”ってゲラゲラ笑う姿はどう見ても、いつものみや


じゃあ、さっきのは聞き間違い?って思うんだけど、

私だけじゃなくて、皆も驚いた顔をしてみやを見たから、それは無いんだろうけど

…いや、でもみやがあんなこと言う?

私の大好きなみやってそんな性格じゃなかったよ

素直なみやも好きだけど…って言うか、そっちの方が嬉しいけど


「あっ、みや」

「もうっ、何?」

「えっと、好き…?」

「うん、だからウチも梨沙子の事好きだって言ってるじゃん」


みやは少し怒った様にそう言った

私は嬉しいんだけど、やっぱり落ち着かない


「ありがと…」

「うん」


みやはさっきまで読んでいた雑誌に目を戻す

私は嬉しさと驚きで突っ立ったまま

そしたら桃が横にちょこんとやって来て、服の袖を引っ張る

驚いて声を出した私を見て、みやは一瞬不思議そうにするけどすぐ雑誌に目を戻す


桃はそれを確認すると、耳打ちで話して来る


「うわっ、桃なに?」

「りーちゃん、りーちゃん良かったね」

「…でも、」

「なぁに?」


桃は優しく微笑んで、本当に嬉しそうにしてくれるけど

私はやっぱり落ち着かない


「だって、みや…おかしいよ」

「そっかな?みーやんだって少しは大人になるんだよ」

「そーかなぁ…」

「もうっ!!素直に喜びなよ!!今はりーちゃんがこの前までのみやみたいに素直じゃないよ!!」

「うっ、嬉しいもん!!ちゃんと!!」


私と桃はみやを眺める

特別変わった様には思えないけど、どこか不思議で

それでも“好き”ってみやに言ってもらえるのが、こんなに嬉しい事なんだって

それを知れたから、良かったかなって思った