「お客様、すみませんが当店での睡眠は…」
「寝てませーん、少し伏せてただけですぅー」
絵里が今居るのは大好きな恋人のれいなのバイト先
お昼はランチが出来て、夜は居酒屋って言う、そんなお店でれいなはお昼バイトをしている
大学生の絵里と違って、フリーターのれいなと会えるのはデートの時と、絵里が会いに行くときだけ
だから、極力大切に時間を過ごしたいのに、れいなはそうでも無いみたい
こうやって絵里がサプライズで会いに行っても、結構、すっごく素っ気ない
トントンと肩を叩かれ、そっちの方を見上げるといかにも不機嫌ですって顔をしたれいな
そんな顔もだいぶ見慣れたと思うのは、最近ずっとこんなやり取りの繰り返しだから
不機嫌な顔も可愛いなぁって思えるのは絵里がれいなの事をちょー好きだから
バイト先の制服の白いシャツが似合っていて、不断の少しヤンキーみたいなジャージ姿より絵里は好き
ボサッて伸びた髪のせいで女の子に見えなくも無いくらい可愛い
可愛い可愛いって言うと「俺は男やけん、可愛いって言われても嬉しくなかっ!!」って怒るんだけど、
そう言う所も可愛いと思う
「あっそ…じゃあお客様、失礼ですが一杯でもよろしいので…」
「お冷やもらってまーす」
「いやっ、そうやなくてちゃんとメニューから頼めって言っとーと!!」
れいなは結構気が短いっていうか、少し堪えてみようとするんだけど我慢出来ないタイプ
おっとりしててユージュー不断の絵里とは正反対って感じ
だから、絵里がする事に時々すっごく怖い顔をする…のは、付き合い始めた頃で、最近は呆れた顔しかしなくなった
バイト中は頑張って標準語を使おうとしてるのに、絵里と話すときだけはいつもみたいに博多弁
それって、やっぱり絵里と居るのが自然な事だから?なんて思うと、キツく聞こえる博多弁もすっごく可愛く思える
「だってー、絵里バイトしてないし、お金ないし…」
「はぁ…もう何が良いと?俺、奢るけん」
「れーなありがとっ!!んーとね、オレンジジュースがいいな」
返事はしないで、ポンと一回絵里の頭を叩く
その手はそんなに大きくはないんだけど、凄く優しくて
だから、れいなの事が好きだって思う
れいなが持って来てくれたオレンジジュースを飲みながら、ランチタイムが終わる時間を計算する
あと、大体30分くらいで、れいなが解放されて絵里の所へやって来る
「田中、お前…だよなぁ」
「いや、俺そんなんじゃ無いですよ…」
「いやいや、羨ましいぞ…あんな子がお迎えに来てくれて」
ぽけーっとしながら聞き耳を立てると、れいなが先輩のなんとかサン(名前忘れたっ☆)と話している
所々聞き取れないけど、どうも絵里の事を話してるみたい
そんな噂をされちゃったら、気になって仕方が無いじゃん!!なんて思っていると目が合う
さっきまでのキリっとした表情とは違って、フッと優しく笑ってくれる
「絵里、あと少しで終われるけん、もうちょっと待っとって」
「…うん!!」
他にお客さんが居るのに、そんなの構わずれいなは絵里だけを見ている
その視線に絵里は釘付け
ちょっとキツめの彼だけど
絵里はそれでとろける様な恋をする