The First Impression

変な人

それが最初の印象で、今でもそれは変わってない


* * * * *


中学に入った時からいわゆる縦の関係がキツくなった

先輩にタメ口聞くなとか、後輩はとっちめちゃって良いとか

ウチにはそんなのめんどくて、極力知り合いを増やさない様にしてた


まぁ、人見知りって言うのもあるんだけど


でも、高校に入って、一人だけ上手くいかなかった…それが桃だ



幼馴染で先輩のえりかちゃんの所にCDを返しに行った時の事だった

どう見てもウチより幼くて、頑張って見ても先輩には見えない人が廊下に居たから声をかけた


「えりかちゃん居る?」

「1年?」

「うん…あっ、君も1年だからえりかちゃん知らないか」


ウチはその子…桃を見て、あっ、間違えたと思った

だから、軽く謝ってスルーしようとしたら引き止められた


「タメ口、ダメだよー」

「はっ?」

「桃はこの学校で今一番可愛い2年なんだから」


いま、この人2年って言った…

うわ、ヤベーって思ったから、ますますスルーして逃げようと思った


「名前は?」

「夏焼」

「ナツヤキ?」

「うん、夏焼雅」


それなのに、事態は上手く行かなくて、どんどん桃は絡んで来る

正直、うざいと思うくらいに絡んで来る


「そうかそうか。じゃあみーやん、謝りなさい」

「はぁ?」

「みーやんは1年、桃は2年でしかもちょー可愛いの」

「可愛いとか関係ないじゃん」

「でも、2年なんだよ」


ウチより背が低い桃は下から上目遣いで見上げながらブーブー言って来る

それは怒っているのか、からかっているのか分からないけど、ウチにとっては面倒な事この上なくて

少し、顔に出てしまう程に面倒だった


「あー、ごめん、なさい」

「まぁ、それで良しとするか」

「うん、じゃあね」

「ちょっと待って、えりかちゃん今居ないよ」


絡まれた事で忘れて居たけど、ウチはえりかちゃんに会いに来ていたんだった

忘れる所だったけど、桃のお陰で思い出せて良かった


「そっか、じゃあ帰る」

「桃が頼まれようか?」

「いや、良い…なんか頼り甲斐ないし」


どう考えても、危なっかしい感じがする

それにいくらウチとえりかちゃんでもトラブルが起こるのは面倒だ


「ちょっと聞き捨てならないんですけどー」

「何が?」

「桃、かなり大人だから頼り甲斐?とかそういうのを体現してるよー」

「そっか。じゃあ、お願いだから離して」


ウチがクルッと振り返って帰ろうとしていたのに、いつの間にかスカートからはみ出たシャツを掴まれている

これじゃ、まるで駄々っ子を相手する保育士の様だ


「良いけど、ちゃんと敬語使って」

「あー、ごめん。離して、下さい」


ウチはぶっちゃけ桃に敬語を使うのが嫌だと思っていたから、どうも途切れ途切れな言い草になってしまう

それが気に食わないのか、面白がっているのか分からないけど、桃は更にしつこく絡んで来る


「みーやん、君は教育される必要があるよ」

「あー、そう。分かったからさ、離してよ」

「むー…でも、良いや」


パッとシャツを離され、少し躓いてしまうけど何とか持ちこたえる


「えりかちゃんなら多分次の休み時間には居るから、また来なよ」

「あー、ありがと」

「桃ともまた会えるし嬉しいでしょ?」


普通の感覚の持ち主なら言えない様な事をニコニコと平然と言ってのける目の前の小さい人

ウチはそれが少しずつ可笑しくなって来て、笑いが堪えられなくなる


「面白いね、先輩」

「えっ、何が?桃は面白いじゃなくて可愛いでしょ!!」

「そーゆートコロ。ちょー面白いよ」


クルクルと表情が変わって行くのがやっぱり、どうも面白くて

遂にウチは大声を出して笑ってしまった


「ハァー面白い、先輩名前は?」

「むー!!ツグナガ、嗣永桃子!!有名人なんだから覚えといてよ」

「うん、気が向いたら覚える」


ウチは笑いながら、今度こそクルッと綺麗に振り返って歩き始めた

そうしたら後ろから桃に声をかけられる


「みーやん!!」


ウチは顔だけ向けて話を聞く



「今度来たら、桃が教育し直すからね!!」

「望むところですよー」


そう言うとどちらとも無くブーッと吹き出して笑い合った


やっぱり変だ、と思うのは桃に対してなのか、ウチ自身に対してなのか分からなかった

だけど、ウチはそれが何だか分からないけど、楽しくて仕方なかった