調理実習室にて

調理教室にて


「あっ、舞美食べ過ぎ!!」

「モガっ…えー、これ全部俺のじゃないの?」

「グループ調理じゃん、俺らの分もあるの」


今日家庭かは調理実習

調理教室の後方では男子のグループがわいわいと作った料理を食べ始めている

そんな中で騒いでいるのはシミズくんをヤジマくんのグループ

どうもヤジマくんが一人でほとんどを食べてしまったよう


「あー、俺購買行って何か買ってこよう…」


小声で呟き、シミズくんはそそくさと席を立つ

教室を出ようとした所で声をかけられシミズくんはその声の方を向く


「シミサキ、どこ行くの?」

「舞美が俺の分まで食べたからパンでも買いに行く」

「もー、ホント舞美はバカだねー」


声をかけたのはウメダさん

シミズくんとヤジマくんの友達で、ヤジマくんの彼女なんじゃないかって校内で噂の子


「えりかは食べたの?」

「今から。桃の手伝ってたんだけどもうお手上げ」


ウメダさんがチラリと自分のグループの方を見ると一人であくせく頑張っている小さな子

ツグナガさんがフライパンを持って右往左往しながらキャーキャー叫んでいる


「えりかちゃーん、無理!!桃もう無理!!」

「…後盛りつけだけだから、頑張れ」


ウメダさんが冷たく言い放つとツグナガさんは少し恨めしそうな表情でジーッと見て来る


「もー!!いいもん、桃えりかちゃんの食べるから」

「だめ、ウチの分はウチの分だし」


言い合いを始めた二人を見ながらシミズくんは少しあきれた様な表情で見つめる


「そうだ、シミサキ、ウチらのグループの食べる」

「ほぇっ?」

「ウチら結構沢山作ってるし」


シミズくんは少し考え込む

頭より先にお腹が正直に答えを出す


「うーん、じゃあ頂こうかなぁ…」


そう言ってウメダさんたちの所に行くと綺麗に盛りつけられたお皿と

お世辞でも褒める事の出来ない様なお皿が並んでいる


「じゃあ、いただき…」

「そっち、ウチの」

「冗談です…」


頂くとは言ったものの乗り気じゃなくなって来る

それくらい悲惨な出来の完成品に手をつける


「シミサキ、無理しなくても良いよ、ウチのあげるから」

「舞美にあげようと作ったものは貰いません」


ウメダさんの顔を見てにやりと嫌みを言う

それを聞いてウメダさんは顔を赤くして、フリーズしてしまう


「これ、ツグナガさんが作ったの?」

「うん…見かけはアレだけど、美味しいから!!多分…」


ツグナガさんが言い訳しているのも聞かずにシミズくんは食べ始める


「あー、美味しくなかったら言ってよ、桃なんか買って来るからね」

「…美味しいですよ、ちゃんと」


シミズくんはお皿に向かったままそう呟く

それはギリギリツグナガさんに聞こえるか聞こえないかくらいの声


「見かけは…褒めれないですけど、美味しいです」


もう一度呟くとぱくぱくと箸を進める

ツグナガさんはそんなシミズくんを心配そうに眺める

それでもシミズくんは食べ続ける


「こんなに美味しいの作れるなら、良いお嫁さんになれますよ」

「えっ、…」


ニコリと笑ってツグナガさんを見たシミズくん

すると叫び声がする


「シミズー、舞美がお詫びにジュース奢ってくれるってー!!」

「マジ?じゃー、俺も一緒に買いに行くわー」


そう言ってお箸を綺麗にそろえて置くと、シミズくんは立ち上がって教室を出て行こうとする

扉付近まで行って、立ち止まり振り返る


「ツグナガさん、ごちそうさま」


その笑顔はいつもと変わらない、はにかんだような笑顔なのに

ツグナガさんはいつもよりもドキドキしていた