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初めて通った時は言いようの無い不安と得体の知れない期待で溢れていた道も

見慣れてしまえばたいしたモノじゃないって気がついて

ここを通る度に皆には言えない様な気持ちがくすぶってしまう


でも、大好きで憧れて始めたこの仕事

スポットライトを当てられた瞬間のピリピリとした感じは一度味わったら忘れられない

だから、普通の生活はこの道を通り抜けるまでに置いて来る


それでも隠し切れない不安に襲われてしまう

まるで世界がいきなり海に飲み込まれてしまう様なそんな感覚

そんな不安に耐えられそうに無い時にそのまま沈んでしまう


強い耐性なんて持っていなくて、ブクブクとまとわりつく様な気泡を見ながら

果てには海底にたどり着いて、見上げる水面はキラキラ揺れて綺麗だなって

海底は静かで案外良い場所だなんて思ってしまうと

ゆっくりと瞼を下ろして現実から目を逸らしたくなる


だけどそんな時に決まって水面を横切る黒い陰

目を凝らしてみるとそれは海を渡り切るには頼りない程ぼろぼろの船

ボヤボヤと水を介して伝わって来る音は楽しそうで、凄く魅力的に聞こえて来る


それは桃を酷く夢のある世界へ連れて行く…

それが本当はどういう世界か知っていても、どうしてか引き戻される


「もーも!!おはよー」

「…おはよ、佐紀ちゃん」

「あっれー、元気無い?疲れてるとか?」


桃の隣にピョコンと現れた笑顔の佐紀ちゃん

夢を見せるロマンチックな一面と、現実を与える悲しい一面


桃はいつも苦しくなる、何でそんなにも真っ直ぐなんだろうかって


そんな佐紀ちゃんに桃も何かを求めていて、それが何かは分からないけれど

直ぐに見つかる様な簡単な答えだと思いたくない

そんなものが欲しいんじゃないから


その何かをくれる時に、桃は佐紀ちゃんに綺麗な綺麗な海から出る為に落とした鱗をあげるわ

だから、どうかずっと桃を連れてどこまでも…