あの子が来なかった
いつも通りにやって来て、いつも通りピアノに触れて、いつも通りにしていたのに
結構毎日同じ様な時間にやって来るのに、来る気配すら無かった
近付くにつれて聞こえて来る足音もなかった
もう少し待ってみる事も出来たかも知れない
だけど、本能的にあの子は来ないと分かった
昨日とは違った足取りで帰る
一歩ずつ進むごとに重くなる様な気分
頭の中ではあの子の声がグルグルとずーっと回っている
どうも、体があの声を求めているみたいだ
ハハハっと自嘲気味に笑うと、少しだけ気を持ち直して踏み出す一歩に力を込めた
* * * * *
「もう来てたの?」
「んー、ずーっと居たよー」
「ふぅーん…暇だねぇ」
あの子は居なくて、いつもと違った
梨沙子は居て、いつもと一緒
少し残念な気がしてるけど、それが普通なんだとは分かっている
「何かみや今日寂しそう」
「そうかな?」
「うん、昨日と違う」
流石、梨沙子と思いながらウチはなんとか勘ぐられない様にしている
梨沙子はそう言う事を汲み取ってくれるから、ウチは落ち着く事が出来る
「みや、今凄く眠いでしょ?」
「えっ、あぁ…そう言えば、そうだけど」
「そんな匂いした…もう寝よう」
梨沙子は妙に気を利かせる
それがどうも気に食わなかったけど、ウチは言いようの無い眠さに襲われて
何も言い返さずに、素直にベッドに入った