Parallel 8

あの子が来なかった

いつも通りにやって来て、いつも通りピアノに触れて、いつも通りにしていたのに


結構毎日同じ様な時間にやって来るのに、来る気配すら無かった

近付くにつれて聞こえて来る足音もなかった

もう少し待ってみる事も出来たかも知れない

だけど、本能的にあの子は来ないと分かった


昨日とは違った足取りで帰る

一歩ずつ進むごとに重くなる様な気分

頭の中ではあの子の声がグルグルとずーっと回っている

どうも、体があの声を求めているみたいだ


ハハハっと自嘲気味に笑うと、少しだけ気を持ち直して踏み出す一歩に力を込めた


* * * * *


「もう来てたの?」

「んー、ずーっと居たよー」

「ふぅーん…暇だねぇ」


あの子は居なくて、いつもと違った

梨沙子は居て、いつもと一緒

少し残念な気がしてるけど、それが普通なんだとは分かっている


「何かみや今日寂しそう」

「そうかな?」

「うん、昨日と違う」


流石、梨沙子と思いながらウチはなんとか勘ぐられない様にしている

梨沙子はそう言う事を汲み取ってくれるから、ウチは落ち着く事が出来る


「みや、今凄く眠いでしょ?」

「えっ、あぁ…そう言えば、そうだけど」

「そんな匂いした…もう寝よう」


梨沙子は妙に気を利かせる

それがどうも気に食わなかったけど、ウチは言いようの無い眠さに襲われて

何も言い返さずに、素直にベッドに入った