「…ってなるから、答えは、こうですかね?」
「うん、正解戻っていいぞー」
黒板に書かれた式は、我ながら天晴だと思う
先生に文句は言わせないし、皆には少し唸ってもらおう
「じゃあ、切りがいいし今日は終了」
「「ありがとーございましたぁ」」
* * * * *
校舎の一階の休憩が出来る広場
校舎の天辺まで吹き抜けで、ガラス張りの天井から差し込む日光が気持ち良い
私だけではなく、生徒全員がこの場所を気に入ってると言っても過言じゃない
私はいつもそこで愛理や他の友達と昼食をとっている
「あれぇ、栞ちゃん今日一人」
「あぁ桃先輩、愛理なんか貧血で早退したって」
「えぇー、大丈夫なの?」
「大丈夫って、メールでは言ってました」
今日は愛理が居ない
だけど、高等部の先輩の桃先輩と、佐紀先輩が居る
「て言うか、栞ちゃんこの前桃のこと追い払ったでしょー」
「…しましたっけ?」
桃先輩は明るくて、構ってくれて、優しい
時々絡まれ過ぎて煩わしくなる時もあるけど、基本いい人だ
「あんたがどうせ要らない事したんでしょー」
「佐紀ちゃん、ひどーい!!」
佐紀先輩はそんな桃先輩の素晴らしいパートナーと言うか、相方と言うか
扱いを熟知していて、二人のやり取りは見ていて楽しい
笑いながら二人を見ていると、桃先輩はお弁当と他にプリントの分厚い束を持っている
「て言うか、桃先輩それ何ですか?」
「何かねー、物理が出来ないから先生が頑張れって」
「要するに補習ですか?」
プリントをヒラヒラ捲って見ながら桃先輩は心底嫌そうな顔をしている
でも、私が知る限り先輩、そんなに頭悪くないはず
どっちかって言うと、成績はいい方だったはずだ
「まぁ、補習とまでは言わないけどちょっと足りなかった分補ってくれるんだってー」
「へぇ、でも先輩って頭良いと思ってました」
「物理だけ…相対速度とか、偶力とか分からないし、ニュートンとか、もう無理…」
へぇー、と頷いて先輩の手からプリントを抜き取る
何問かチラリと見る…
「書くものありますか」
「あっ、うん筆箱…」
多分、ただの自己満足なんだけど、
こうやって目の前に問題があると解きたくなるし、ウズウズしてしまう
「…ふうっ」
「すごーい、栞ちゃんすごいっ!!」
「えっ、あぁー…ありがとうございます」
「ねぇ、栞ちゃん…」
キラキラとした瞳で桃先輩が見つめて来る
隣で佐紀先輩も真剣な感じで私を見ている
「「良かったら、物理教えて!!」」
「良いですけど、そんなに出来ませんよ私…」
* * * * *
何気ない一日だった
あとになって、この時もう私の周りが少しずつ歪んで来てたって知った