全く知りもしないのに
全てが解る様な気がした
* * * * *
周りに騒がれるのはあまり好きじゃない
私はフツーの女の子だし、皆となんら変わりないのに
だけど、ある時嫌じゃなくなった
ある先輩が私と似た様な目をしていたから
…夏焼先輩
綺麗で格好良い、皆に騒がれているからって調子に乗るワケじゃなくて
そんなの聞こえていない様にしている
ただ、私には聞こえた気がした
何もかもに少しずつ嫌気がさしてる、一人を望んでいる
そんな先輩の心の声みたいなヤツが
だからと言って、私が先輩と交わる事も無ければ、生活も変わらない
ポヤーと過ごして一日が終わって、また始まる
今日だってそうだった
友達からの誘いも断って、一人の帰り道
寄り道もしないで
でも、真っ直ぐ家に帰るのは嫌で
ゆっくり、この前社会の授業で習った牛歩ってやつみたいに歩く
少し前に小さく見える背中
…あっ、夏焼先輩だー
歩くのを速めようと思った
でも、止めた
また何か聞こえた気がしたから
先輩も私に負けないくらいゆっくり歩いていた
「イヒヒ…」
小さく漏れた笑い
可笑しくて、嬉しくて、心に張り詰めていた糸が綻んだ
そのまま一定の距離を保って歩いていた
でも突然だった
「あっ…」
先輩が振り返った
私に気付いた
照れてるのか、面倒くさがっているのか分からなかったけど
少しだけ手を上げて、口元を上げるだけの笑顔を作った
簡単な挨拶だったけど、私にはちゃんと分かった
先輩に駆け寄る
そんなに速く走れないけれど
頑張ったと思う
「家、こっちの方?」
「はい」
「じゃあ、途中まで一緒か…」
頬を指で掻く仕草…困ってるのかな?
校舎全体を使った大々的な鬼ごっこをしたりする人とは思えない様な姿
どっちが本当の先輩かは分からないけど、私は今の先輩の方が好きだと思った
「じゃあウチ、こっちだから」
「あっ、さようなら」
挨拶をして、別れる
特に何かを話したわけじゃない
だけど凄く楽しかった
それに凄く落ち着けた
リンリンリンと小さく心がなった
多分それはどこか似ている先輩に私の心が反応したんだと思う
これが先輩にも聞こえていたら
そんな風に私は思った