私の中のルールを守れば絶対に
次の日も良い事がある様な気がする
* * * * *
忘れっぽい性格の私なのに
私の中には勝手なルールが沢山ある
それは気休めだったり、ジンクスだったり色んな由縁のあるルールだ
・ローファーとかはどうでもいいけどスパイクだけは右から履く(そっちの方がなんかタイムが良くなる気がする)
・よく知らない人とはあまりペチャクチャと喋らない(イメージが崩れるって佐紀に言われた)
・緑茶じゃなくてミドリチャ(嗣永ケンポーってヤツらしい)
などなど
まだあるけど、そういう場面に遭遇しないと思い出せないから今はこれくらい
他のルールは忘れても絶対忘れないルールが一つだけある
あの日からずっと守っている
大事な、大事な…
・18時の下校のカノンはえりと聴く
私の高校は私立の女子校
お嬢様が集まるってわけでもないけど、まぁそれなりに女の子が集まったら色んな事情の子もいるわけで
18時30分には生徒は完全下校しないといけない校則がある
その校則を守らせるために学校側は17時30分過ぎには部活を終了させて
18時には下校放送がある
部活でもやってない限り大体この校則は守る事が出来る
私は中学校の時から陸上部だった
まぁまぁ足は速くて、上手くいけば県大会とかにも出ちゃうレベルで
そんな経歴があるもんだから、高校に入っても陸上部からお呼びがかかった
一方、幼馴染のえりは中学校からずーっと帰宅部だった
すっごいおしゃれで、家族の事が大好きで
自分の時間が沢山欲しいって言ってた
本当に自由人って感じで、良い意味で誰にも縛られないタイプ
長く付き合ってきたから、そんな事だって知っていた
そんな私とえりの何でもない約束
それが私の一番大事なルール
* * * * *
それはえりが度重なる風紀違反で、先生に長い長い説教を喰らった日だった
部活が終わって、片付けも無くて、さぁ帰るかーって部室から出て大きく伸びをした時だった
「あっ、電気…」
たまたま私は日直だった
日誌を書いたりをもう一人の子がしてくれたし
その子が用事があるからって、教室の施錠をする事になった
窓の鍵、教室の後ろの扉の鍵、そして最後に前の鍵を閉める
当然、電気だって消したはずだった
それはもう完璧にしたはずだった
だけど、教室の電気がついていた
「ヤバいなぁ、消しにいかなきゃ」
何と言っても慌てん坊で、忘れっぽい私だから
そんな失敗があっても全くおかしくない
思い立ったら即、行動に移っていた
ガーッと階段を駆け上って、ガーッと教室まで走っていた
「あれっ、舞美じゃん」
「えっ、えり…?」
私が教室の前に着いた時にはえりが電気を消して、鍵を掛けようとしていた
「どしたの?」
「いや、私日直…仕事…えっと…」
「落ち着きなよ」
えりは柔らかく笑った
いつもは豪快に笑うのに、時々こうやって笑うのは凄く綺麗だと思う
「電気ついてたから…私日直だったし、消し忘れたかなぁーって」
「あっ、ごめん…さっきまで説教されてて、とりあえず教室に置いてる漫画片付けろって言われてさ」
えりはフーっと溜め息をついて、面倒くさそうに鍵を掛ける
「大変だったね、お疲れ様」
「いや、舞美に比べたら…自業自得だし」
私たちは他愛のない話をする
時計なんて見てなかった
だから、18時になろうとしてるなんて知らなくて
「あっ…カノン」
「何、これ?」
「えりは知らないのか」
「うん、で何?」
私は説明した
18時になったら放送で流れる事を
えりは「この曲好きなんだよねー」なんて鼻歌で歌いながら上機嫌で
そんなえりを見た私も上機嫌だった
それからも私たちの他愛のない話は続いて
何となく盛り上がったんでえりの家で少し話を続けてからバイバイをした
* * * * *
「じゃあ、移動してー」
次の日、帰りのHRで席替えがあった
比較的、皆と仲は良いけど
特に仲が良い、えりとか、佐紀とか、桃とかと近くになった事はなかったから
その日も期待なんてしてなかった
「舞美が隣じゃん、初めてじゃない?」
あまり位置が変わらなくて、そんなに移動しなくて良かった私は皆より一足先に座っていた
だから声が聞こえた瞬間、顔を思い切り上に向けた
「えりぃ~」
「舞美ぃ~」
ブハッてえりは笑って、席についた
私は本当に嬉しくて仕方なかった
「なぁんか、善い事したっけか?」
「ん~…昨日一緒に帰ったからじゃない」
「ちょっ、舞美それ善い事じゃないし」
「でもさ、普段と違う事なんてそれくらいしか思い付かないし…」
えりは「ん~」って唸りながら考えている
その姿が面白くて、私はまた笑顔になる
そして、何気無く言っていた
「良い事起こるみたいだし、えりとカノン、毎日聴きたいなぁー」
本当に何気無くだった
多分皆が後先考えてないって言うのはこういう所なのかも知れない
でも、そんなに深く物事を考えても私にはよく分からなかったりするし
「じゃあ、ウチ舞美の部活終わるまで待ってるよ」
「えっ?」
「ウチが待ってたら、聴けるじゃん一緒に」
…
……
………
今、何て言った?
えり、何て言った?
「いーよ、ウチこの頃暇だしさぁ」
「…」
「確か、先生に残って掃除しろって言われた気がするし?」
口、すっごい開いてたと思う、絶対
迷惑かけたって思うよりも、嬉しくて仕方なかった
「舞美、大丈夫?大口開いてる」
「あっ…うん、えりありがと」
「何が?ウチ何もしてないっしょ?」
えりは私を不思議そうに見た
私はやっぱり口は開いたままだったと思う
何か変わったかは分からないけど
この時から何かが変わって、私は毎日良い事が起こってる様な気がする
だから、良い事が起こる、そんなルールが私には大事