靴箱騒然

見える景色が変わっても


実際何が変わったかなんて本当は何もないのかも


* * * * *


朝、会わなかった

どうせ寝坊だから、何も言わない

だけど、部活の先輩は少々お冠で、放課後がちょっと楽しみだった


「千聖、何やってんの?」

「あ~、舞ちゃん!!助けて…」


部活に行こうと誘いに来た、2年生の教室

そこに居るのは千聖一人だけで

電気が無くても明るい教室で机に向かって黙々と一人戦っていた


「今日、寝坊して2限までサボっちゃったんだよ」

「アーララ」

「先週のその時間の英語も遅刻しちゃって、明日の英語あてるって言われてさー」


予習しなきゃだよーなんて嘆いてる

完全に困ってますって表情な千聖

こういうところも皆に好かれるところなんだろうなぁって、舞は悠長に思う


「それもだけどさ、栞菜…先輩が今日の放課後楽しみにしてるってさ」

「うわっ…え~、もう無理じゃん!!」


お手上げです!!って感じで体を伸ばす

うあーなんて叫んで、本当に大変そう


「…ん~、英語は愛理に見せてもらうっ!!部活、部活行く!!」

「行こ、栞菜先輩待ってるし♪」


少しイタズラに笑う

千聖は本当に恨めしそうに舞を見る

そんな千聖を何度も見てきた

ただちょっとだけ、それがちょっと下の方に見える様になったけど


「あー、行きたいけど、行きたくない…」

「まぁ、栞菜先輩だしそんなに怒らないでしょ」

「だけどさ、皆が見てるとこだよ?千聖ちょー笑いものじゃん」


靴箱に着いて、学年の違う舞たちは少し離ればなれ

それでも千聖は大声を出して話してくる


「仕方ないじゃん、千聖のせいだし」

「だけどさー」

「学習しなきゃ」

「舞ちゃんも一緒に怒られてよ」


…千聖の言う事は大体毎回支離滅裂だけど、時々ホントに心の底からため息をつきたくなる


「ねぇ、千聖」

「何、舞ちゃん?」

「千聖が寝坊したの」

「うん」

「何で舞まで怒られなきゃいけないの?」


だから、舞は諭す様に話す、千聖は真面目にそれを聞く

どっちが年上か分からなくなる


「いやー、二人だったら大丈夫かなって」

「いやいや、意味分かんないよ」


でも、ずーっとこんな感じで

だから、千聖の事嫌いじゃない


「…もう、ウダウダ言ってないで行こう」

「ん~」


だって、そんな変わらない千聖が良いんだもん


「あっ、良いこと教えてあげる」

「ふぇっ、何?何々?」

「今日、栞菜先輩も遅刻したから、それ言えば?」

「おっ…おぉー?ありがと舞ちゃん…」


多分、だから何なんだ?とか思ってながらも頷く千聖

…やっぱり、バカだ、反論とかしようと思わないの?って舞は思う


「まぁ、行くか」

「うん」


靴をつっかけて走り出した千聖

舞も遅れない様について行く


「て言うか、千聖寝坊するほど寝てるのに大きくならないよね」

「うわ、舞ちゃん今千聖が一番気にしてる事言った!!」

「ハハハッ!!だって本当ですよ?」


わーわー騒ぎながら走る舞たち

何だか毎日こんな調子


「いつか千聖だって大きくなるんだから!!」

「はいはい…」


ほら、どれだけ身長が伸びたって

どれだけ見える景色が変わったって


変わらないモノがある瞬間

それは舞にとって千聖と居る瞬間