視線に込められた意味も
分かるようで分からないなぁって思った
* * * * *
ジャーと流れる水で頭を冷やす
外練の日はこれが欠かせない
太陽の熱をたっぷり吸収した髪が冷えていくのは気持ちが良い
舞ちゃんには犬みたいだって笑われるけど、仕方ないじゃんって思う
今日は度重なる遅刻のせいで栞菜先輩に怒られた
いつもだったら助け船を出してくれるなっきぃもただ苦笑いをするだけで
なんとなくヤバいなぁって言うのは感じてとれた
案の定、今日は道具の片付けを全部任せられた
外練だから、ただでさえ汚れているのに
今日は一段と汚れた様に感じて
いつもより水の勢いを強めにした
「千聖?」
「んー、あっ愛理じゃ〜ん、いま帰り?」
「うん」
髪についた土を流し終わって、顔を洗ってる時だった
クラスメイトの愛理が後ろから声をかけてきた
でも、愛理って…
「でも愛理帰宅部じゃん」
「…千聖、朝のHR居なかったもんねぇ」
「えっ、何それ?」
愛理は大袈裟に溜め息をついて千聖を見る
愛理はいつもはポケポケしてるのに、千聖を見る時だけは何か大人ぶる
千聖的にそれは結構可笑しいんだけど、笑ったら愛理は千聖を“変な子”って思うだろうから言わない
「私、合唱コンの係になったの」
「ふーん」
「だから、今日…」
愛理の言葉が止まった
何か怖いモノでも見るように愛理の目の色が変わっていく
千聖の後ろに何か怖いものでもいる…?
ベシンッ!!
「イテッ…」
「千聖ちゃぁーん…片付け終わったら、反省会って言ったよねぇ?」
「げっ…栞菜先輩」
振り向かなくても分かるけど
でも、顔を見て謝らなきゃ怖い
だって、いつもより禍々しいオーラを感じる…
「ごめんなさい!!」
「いーから早くしなよ!!皆待ってるから」
「はぁーい」
先輩はそれだけ告げて、すぐ走って部室の方に向かう
先輩が部室に入ったのを見届けて愛理をギロリと睨む
…あれっ?何か変だ
いつもの愛理なら“千聖ってホントに…”とか何か言おうとして笑い出すのに、ボーッとどこかを見てる
視線の先はさっきまで千聖も見てた方向
「ねぇ…」
「んっ?」
「あの人、先輩?」
「うん、栞菜…有原栞菜先輩だよ」
愛理、先輩と知り合いか何かなのかな?
いや、知り合いなら名前知ってるか
「どうかしたの?知り合い?」
「えっ…いやっ…うー、何も無いよ!!ホント何にも無いから!!もう帰る、バイバイ!!」
「えーっ…バイバーイ」
ヒラヒラと手を振りながら、いきなり駆け出して行った愛理を見る
何だ、ありゃ?変なの、なんて思って部室の方を向くと栞菜先輩がまた外に出てきてた
うわぁ、本格的にヤバいなんて思って
とりあえず叫んで謝ろうかなって口を開けた瞬間に気付いた
栞菜先輩は走って行った愛理の方をずっと見ていた
「あ〜、英語のノート貸してって言いそびれた…」
とか、思いながら千聖は部室の方に走り始めた
* * * * *
何がどうか分からないけど
なんとなく、そういう事なんだろう
千聖は一個勉強した気分になった