特別を君にあげる
大好きな君にあげる
今日は土曜日である前に、私の誕生日
学校が休みだから、皆から直接おめでとうを言って貰えるのは月曜日になる
ちょっと悲しいけど、リビングに行ったらそんなの直ぐに吹き飛んだ
「舞美おはよー」
「えり…」
普段は家族しか自由に座らないソファーに深く腰かけて、顔だけ私に向けてえりは挨拶をする
それがあまりにも自然で、私はちょっと笑いたくなった
「何で居るの?」
「うわっ、そういう言い方する?」
「あっ、そうじゃなくて」
「分かってるって」
えりはケラケラ笑って立ち上がる
そして、私の前に来て、まぁまぁと言ってキッチンへ促した
「じゃーん」
「何これ?」
「ケーキ」
目の前には私の大好きなさくらんぼが沢山乗ったタルトケーキ
朝からだって言うのに、えりはテンション高めにそれを切り始める
「舞美の誕生日だから、特別にウチのお手製ケーキです!!」
「ありがとー」
私はケーキをえりが作ってくれた事よりも
えりがそれを見せてくる笑顔が、嬉しくて仕方なかった
「そういや、お母さんたちは?」
「ウチが来たら、あとは任せるって言って出かけて行ったよ」
「えっ、もう…えりごめんね」
「何が?ウチは舞美の誕生日を誰よりも早く祝いたくて来たから、願ったり叶ったりですよ」
私はケーキを一口、パクリと頬張りながらえりと話す
私の向かいに座ったえりは、ウチも食べようなんて言いながらケーキに手を伸ばす
私の誕生日
ケーキがある
いつもとは違う特別
だけど、えりと居る雰囲気は変わらない
それがくすぐったくて、気持ち良くて
やっぱりいつも通り笑うしか出来なかった
「舞美、今から暇?」
「うん、今日土曜日だし」
「じゃあ、買い物行こ」
えりはニッコリと笑って、私を見る
その笑顔が綺麗で、私は声が出なかったけど一生懸命に頷いた
えりはそんな私を見て、さっきとは違った、いつもみたいなバカ笑いをした
「着替えてくる!!」
何でだろう?えりが誘ってくれただけ
えりは結構色んな友達と買い物に行ってるし、私だってそうだ
だけど、どうしてかなぁ?ドキドキする
今日は私の誕生日だからだろうか?
「おしゃれ、してよ…」
「えーっ、えり何て?何て言った?」
リビングをガーッと出て行こうとする私に向かって声をかける
よく聞き取れなくて、私は止まってえりを振り返る
…えりの顔は何か赤い気がする
「だからさぁ…」
「うん」
「舞美誕生日なんだし、ウチと二人じゃん」
「うん」
えりは赤い顔のまま、話を続ける
「久しぶりじゃん、何か二人っきり…」
「そう言えば、そうだねー」
「しかも、アレじゃん、特別な日だし…」
えりが少し下を向く
えりの気持ちがちょっとだけ伝わって来た様な気がする
なぁんだ、えりもちゃんと特別な日って思っていてくれたんだって私は安心する
「えり、もう良いよ」
「えっ…」
「特別、上げるから覚悟しといてね!!」
手でピストルの形を作ってバーンとえりを打ち抜く
ポカーンとしたえりの顔を見て、私は部屋へダッシュした
いつもと変わらない私たち
いつもと変わらない土曜日
いつもとは少し違う誕生日
もらって、あげる特別
それは君とだから