Music Hour

いきなり過ぎて、どういう状態なのか一瞬分からなくなった


えっ?って思った時には背中に温かい感触がして

あぁー、抱き付かれているんだって、身体が教えてくれた


ユラユラと小さく揺すられる

だけど声はかけてこない

構って欲しいんだか、欲しくないんだか

正直、めんどくさい…


「ねぇー、暑いし重いんですけどー」

「…重いのは否定出来ないけど、暑くはないよぉ…」


…めんどくさい、撤回

こいつ、確実に何かあった

いつもなら“ももに重いとか言っちゃいけないんだー”みたいに意味不明な反論をしてくるのに


「いやいや、ここ室内だし暖房ちょー効いてるんですけど」

「でも、ももは寒いんですー」


こういう時のももはいつも通りにしようとし過ぎて、変だ

だからと言って、何か上手い言葉をかけてあげる事はしない

気丈に振る舞おうとするももはそれを望んでないから


「風邪ひいたんじゃないのー」

「ん〜、そうかもぉ…」

「プロ意識が足りないぞー、嗣永さん」

「ごめんなさーい」


フフフってももが笑う息が背中にかかる

やっぱり少し、ももらしくないと思う


いつもならこれくらい静かな方が良いって思うのかもしれないけど、私の知っている嗣永桃子はこんなんじゃない


「うつさないで下さいよー」

「えー、お揃いになろうよぉ」

「バカ言わないでよー、仕事になんないじゃーん」


私の知ってる嗣永桃子は五月蝿くて、変な理論立てて言い訳して、ブリブリしてて、でもそれが似合うくらい可愛くて


「それもそうか…佐紀ちゃんが居なくなったらダメだもんねー」

「そうですよ、私キャプテンですから」

「ですよねー」


…多分、私の事一番理解してくれてる気がする


“佐紀ちゃんを支えられる様に”雑誌とかで時々ももはこんな風に答えてる

最初はどうだかって軽く疑ってはいたけど、しっかり頑張ってくれている


“ももって大人じゃ〜ん♪”って自分で言ってしまうけど

確かに皆に気配りが出来て、メンバーの扱いにも長けてる


思い出そうとすればする分だけ、ももは然り気無く支えてくれてる

あれも、これも…今思えばって言う事がかなりある

それくらいももは私を助けてくれてる


「ほら、もも!!」

「はぁーい」

「あんたがちゃんとしてくんなきゃ面倒が一気に増えるんだからね!!」

「どういう意味〜?」


やっと嗣永桃子本領発揮って感じになってきてる

それが普通に嬉しくて、気持ち良くて


私はももに顔が見られてなくて良かった

自分でも分かるくらい優しい顔をしてただろうから

それを見たらももは調子に乗るだろうから


「さぁ、どういう意味でしょうかね〜♪」

「佐紀ちゃんひどぉ〜い」

「ほらいいから、もも行くよ」

「はぁーい」


ももが沈んでた理由なんて分からないけど

私はそれを知りたくないし、それを知る必要もない

そんなことはどうでも良いんだ


私は上手く回る為に歯車に油を点す

綺麗に回り始めたらほら…


聞こえてくるのは私が一番大好きな音楽

誰か一人でも欠けたら、聞く事が出来ない音楽


さぁ始めよう、今日の音楽…