最近、不覚にもドキッとする事が増えた
確かに緊張しすぎるタイプだし、ビビりって言えばビビりだけど
フツーにあるものに驚いたり、怖がったりする事なんて全然なかった
なのに、どうもおかしい
有り得ない事にドキッとする
そんなウチが何か嫌だ…
何かソワソワしてしまう…
「あぁー、もう!!あんたうっさい!!」
「えー、何にも言ってないじゃん」
「とりあえず、そこに居るのがうるさいの!!」
移動のバス、今日はたまたま隣は梨沙子
こいつは確かにちぃとかももみたいにベラベラ喋るタイプじゃない
だから、うるさいなんて事はない
時々構って構ってとうるさい時もあるけど
始終うるさいタイプではない
だけど、確かにうるさくなる
ドキドキ、バクバクってウチの中で不自然なほど沢山刻まれる音
それがウチはうるさく感じて、嫌いで仕方ない
「でも、しょーがないじゃん、そういう座り方なんだし…」
「あー……もうっ!!」
言葉に出来ないイライラを、どこにぶつけるでもなく
ウチは梨沙子の反対派を向いて目を閉じる
寝るワケではないけれど、少し怒っているとアピールするためだ
ちょっとは思い知らせるためだ
梨沙子はまだブツブツと何かを言っている
その内容はどうせ理不尽にキレたウチに対する文句から始まるんだろう
そして、自分を責め始めて、謝ろうとウチの機嫌を伺い始める
果てには泣き出したりするもんだから
要するに、梨沙子は非常に繊細でマイナス思考なヤツってこと
扱いが難しいし、それに対して何か言えば言うほどめんどくさくなる時がほとんど
それでもウチウチだって少なからず罪悪感を感じるワケであって
タイミングを見計らってフォローの一つや二つはする
…フォローというか謝罪だ
* * * * *
そろそろ、そのタイミングかなって思って
ガラスに映る姿で梨沙子の事を確認しようと思って、片目を開けて、それを見る
…
……
………
一瞬、呼吸が出来なくなるかと思った
両目を大きく開いて、ウチは梨沙子の方を振り向いた
失礼な事なのかも知れない
人が涙を流す姿を見て、そんな風に思うのは嗜好的におかしいのかも知れない
だけどウチが思った事はただ、これだけ
“あぁ、綺麗だ…好きなんだ”
ただ、これだけだった
ウチのドキドキの原因はそこにあったんだ
* * * * *
このせいでウチは謝るタイミングを逸してしまった
梨沙子が小さく鼻を啜る音がやけに耳について
ウチの中でのドキドキの音も更に大きくなる
それでも、ウチのイライラは姿を消して
新しく穏やかな気持ちが生まれていた
何も言えないウチの手は
真っ直ぐに梨沙子へと届き、柔らかいその髪に触れ、優しく撫でた
それに対して梨沙子が体を小さくビクッとさせ、ウチの方を見た
涙が少し残った目で、完璧な微笑みをした
言葉にするよりも簡単で
言葉にするよりも伝わる
ウチのドキドキはこんなにも単純な方法で
大好きなモノに変わった