黒板に書いてある事が分からなくなったから、私はゆっくりと目を閉じた
* * * * *
目を開けて見えた世界が、夢の世界だって言うことは直ぐに分かった
教室で、授業中に机に座っていた事を覚えていたから
そして、前にも何度かこの夢を見たことがあった
制服姿の私はこの世界をずっと歩き回って、時々休んで、また歩く
それしかしていなかった
だから、誰かが現れたりするのは未体験で
視線の先に小さく見えるそれは、混乱を引き起こすものでしかなかった
次に気付いた時には私は一人の女の子と手を繋いで歩いていた
その子は白いワンピースを着ていた
足元を見ると裸足で、少し土がついて汚れていたけれど
それが自然体な感じがして似合ってるなぁって思った
私より半歩前を歩き、私を引っ張る形のその子は時々私を振り返って見ては微笑んだ
それもまた自然体なんだとしか言い様がなくて私も微笑んだ
混乱していたはずの私なのに、それが当たり前の様になっていて
それにしても、どうしてこんな事になったのだろう
いつもならただ夢の世界を歩いて終わる
考えながら歩く
違和感がある
私はこの子を知っている様な気がした
もうどれくらい歩いたっけ?
今居るところは初めて見る景色だ
ただ、あてもなく歩いているだけなんだけど、私は不思議な気持ちで満たされていた
(あっ…)
私は思い出した
初めてこの夢の世界に来た時の事を
私は探していたんだ、この子を…愛理の事を、ずっと…
* * * * *
「有原ぁー、起きたかぁ?」
「はぁーい、すいませ〜ん」
夢の世界から帰って来た私は、やっぱりちゃんと教室に居て
時間だけがしっかりと過ぎていた
「次からはちゃんと起きとけよー」
「はぁーい」
「うしっ、今日は早いけど終わり〜日直、挨拶しろ」
皆が椅子を引き、立ち上がる音
何人かは既に意識が休み時間に向かっているだろう
私にはしっかり見えていた
立ち上がる瞬間、教室の窓の外
着崩す事なく、校則通りに着た制服
真紅のタイが映える、白いブラウスは
透き通る様な君の肌に少し似ている
小さく微笑んで、小さく手を振る君
ここは夢の世界じゃない
私はもう君を探す必要は無いんだね
ほら、今すぐ、今度は私からギュッと
君の手を繋ぎに行くよ
夢の話をしたら、笑ってくれるかな?
ずっと愛理に会いたかったんだって言ったら、喜んでくれるかな?
あぁ、今すぐ君に会いに行く