目的地のない魔法のバスに乗ってどこまでも行きたい
でも、目的地がないなんて、ない
猫バスだって999だって、いつかは終点がやってくる
私の隣の人の目的地は確か次の停留所
なのにグッスリ眠っている
しかも私の肩にもたれて
起こさないと、そう思うけどまだ寝顔見ていたいな…
本当はまだ一緒に居たいし、出来る事なら明日まで…
ガタッとバスが揺れる
起きちゃったかな?なんて様子を見てると、モゾモゾと動き出す
「んっ…んん~、って寝てた、私?」
「うん、もうぐっすりと」
「肩、ありがと愛理」
まだ、ちゃんと開いていない目をこすりながら
「あぁ、降りるの次じゃん…起こしてくれて良かったのに」
そんな事言うあなたはちょっと嫌い
寝顔を見てたかったんじゃない
あなたの隣に居たいだけ
明日を一緒に迎えたいだけ
目的地が無かったらずっと隣に居れるのに
そう思うと、ちょっとだけ気持ちが沈んだ
「もう、愛理どうしたー?」
「なーんでもないよぉー」
強がって、おちょくった態度で応えてみるけど
気持ちを隠すのって、私得意じゃない
「嘘だぁ “まだまだ、ずーっと栞菜と一緒に居たいですー”って顔に書いてあるけど?」
「…!!そんなに長いこと書いて、なぃ…」
「じゃあ、何て…?」
あなたはズルい
その目で見えてないモノなんて無いくらいに、何でも見抜いている
私の気持ちだって分かっていながら、そう言うんだ
「…降りないでって、それだけ」
だけど、どんな時だって
例えイタズラしてくる時だって
その目は優しくて、私を吸い込む
運転手さんのアナウンス
あなたが降りる停留所
あなたとの今日にサヨナラする時間
私の小さな願望、あなたに届きましたか?
降りないで、今日はもうちょっとだけ一緒に居たいよ…
そう願って、キュッと目を瞑ったら
肩にコツンと重みが加わった
「有原栞菜さんは鈴木愛理さんの肩が気持ち良くて寝過ごしてしまったので、降りませーん」
ふざけた声色、目は閉じられていて
でも表情は楽しそうに笑っている
「鈴木愛理さんは有原栞菜さんの寝顔が…っか、可愛いなって思ってしまったので、起こせませーん」
「「…フフフッ」」
今度は開かれた目
見つめあって、笑って、ちょっとだけ勇気を貰う
「今日、うちに来て」
「あら、愛理が素直」
「だって…」
勇気を貰っても、本当は恥ずかしい
でも、今日はどうしても一緒に居たい
「まぁ…言われなくても偶然寝過ごした事にして、愛理の家に行くつもりだったけど」
「…本当?」
「うん、だって…だって明日は愛理の誕生日じゃん 一緒に迎えないと」
やっぱりあなたの目は優しくて
それは私の願い事を叶えるには十分過ぎるほど
そんなあなたに見つめられる事が、私にとって一番の…
一番のプレゼントになるから