結局は、そういうこと

『みやー!!

笑った梨沙子の顔が好き

 

 

 

『もう、みやっ!!

 

 

怒った梨沙子の顔が好き

 

 

 

『みやぁ~…』

 

 

泣いた梨沙子の顔が好き

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

 

 

 

要するにウチは梨沙子が好きみたいで

 

 

今日まで忙しくてドッと溜まっていた疲れが出るのも気にせずに

 

 

 

『みやの誕生日、梨沙子にちょーだい!!

 

 

 

 

 

って言う、意味の分からない梨沙子のワガママを

 

 

『良いよ、その日何もないし』

許していた

 

 

 

* * * * *

 

 

 

「ねぇ、梨沙子…」

「んっ?」

 

 

 

家を出た時は頭上にあったはずの太陽が

 

 

今では視界に入って来そうな位置にまで落ちていた

それくらい、ずっと歩き続けている

 

 

 

「どこ行くの?」

 

 

「…ん~?んふふっ♪」

 

 

 

(あっ、誤魔化しやがった)

 

 

 

 

 

そりゃ途中で涼む為にファストフード店に入ったりはしたけど

 

 

梨沙子の目的が分からないまま、歩き続けている

…何となく予想は出来ていた

梨沙子はダメ元でウチの誕生日をウチと一緒に過ごしたいと言って、OKをもらった嬉しさで舞い上がってしまって、肝心要の事を忘れて今日まで来たんだ

どうせ今日の朝にでも誕生日だってことを思い出して、一瞬パニックになったものの、

とりあえずウチの所には行こう!!とか思って…今に至る、そんな感じだろう

 

 

 

全く計画も計算も出来ないヤツなんだ、梨沙子は

 

 

でも、ウチはそんな計算をしない天然な梨沙子も好きみたいだ

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

 

 

 

それでもウチは普通の人間だから、歩き続けていると疲れる

 

 

隣に居たはずの梨沙子よりちょっと後ろをトボトボと歩いている

 

 

 

「て言うかさぁー、梨沙子」

 

 

「何?」

「ウチの誕生日じゃん」

「うん」

「プレゼントとかは?」

 

 

 

疲れると不機嫌になるのは仕方ないと、ウチは思う

 

 

 

 

 

計算をしない梨沙子の行動を、計算出来ていたウチは

 

 

然程不満に思っていなかった事を口にしてしまうくらい、疲れていた

「だって、みやは私に誕生日くれたから」

「はぁっ!?

「プレゼントは要らないかなぁ~?って」

 

 

 

振り向いて言い訳しない所を見ると、悪いと思って無いんだろう

 

 

 

 

 

「百歩譲ってもさぁ、こんなに歩かされると、ウチだって…」

 

 

 

 

 

少し小言程度にチクチク言ってやろうと思ってた

 

 

でも、出来なかった

 

 

 

「ごめんね…でも、みやの誕生日に一緒に居たかったんだもん」

 

 

 

 

 

梨沙子が立ち止まった

 

 

振り向いて、首を傾げてウチを見る

ウチは言葉を失った

それでも、頭の中では“太陽、もうかなり落ちたな”なんて思って

意外と冷静だったのかもしれない

 

 

 

夕陽を背景に佇む梨沙子がどこか儚げで、凄く綺麗で

 

 

 

 

 

無くしまい

 

 

そう思う一心で梨沙子の手を握っていた

 

 

 

「うわっ、みや?」

 

 

「もう、良い」

「えっ?」

「梨沙子が居るなら…梨沙子が居るから、それで許す」

 

 

 

 

 

……

………ヤバい、恥ずかしい

そう思った瞬間、風が吹いた

 

 

 

ウチも梨沙子も風が吹いた方向を向いた

 

 

さっきよりももっと、太陽は落ちていた

 

 

 

「…帰ろっか」

 

 

「うん、帰ろ」

 

 

 

握った手はほどけていなかった

 

 

それだけで機嫌が良くなるウチは相当梨沙子が好きみたいで

梨沙子にウチの誕生日をあげて良かった

そう思った

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

 

 

 

結局はウチは梨沙子が好きってことで

 

 

こんな誕生日でも幸せって思えたのは

そういう事なんだろうと思った