支えてるって勘違いしてた
本当は支えてもらっていて
落ちないようにしっかりと
* * * * *
本当に小さいけど、問題が起こったのはみやが家に帰ってくるって決まった日だった
みやが帰ってくるって言ったから
手伝ってって言われてないけど、手伝おうと思ったから
ケーキ食べさせてくれるって言ったから
学校帰りにVientoに来ていた
大分日も傾いて来て、ちょっと遅めの15時のおやつ
カウンター席に座って
みやが作ってくれた紅茶味のシフォンケーキとオレンジジュース
「美味しい~」
「ありがと」
お世辞抜きで本当に美味しくて
やっぱり私はみやの事を応援したいなと思った
「うん、みやは凄い、こんなに美味しいの作れるんだもん」
「おだてても何も出ませーん」
みやが笑ってくれた
みやがあんな風に恥ずかしそうにはにかんで笑うのは本当に嬉しい時
そんな時だった
「れーなのバカッ!!」
「なんね、バカはそっちやろが」
店の隅
そこは常連の田中さんがいっつも居る席
田中さんはどうも店長代理の亀井さんと知り合いらしくて
仲が良いのか悪いのか、よく口喧嘩をしている
「また?」
「今日新垣さん休みだから、喧嘩してほしくなかったんだけど…」
みやは結構心配性
と言うかすっごい優しくて、負けず嫌いの癖に平和主義者
「ウチ、ちょっと止めてくるわ」
「うん、頑張れ」
いつも通りだったら仲裁が入れば、それなりに収まってたのに
ここは喫茶Viento
何が起こるか分からない
「だから、絵里はれーなの為にっ…!!」
「いつ、れなが頼んだとよ?絵里がする事は時々余計なんよ!!」
「もうどっちの言うことも分かるんで喧嘩は止めて下さいよ!!」
本当二人の喧嘩は凄くて
みや、大変そうだった
でも何か亀井さんの言ってる事、分かる気がする…
「…分かるなぁ、亀井さんの気持ち」
「「えっ…」」
「ちょっと梨沙子!!何言ってるの!!」
だって私も
みやの為に頑張って、それでもあんまり認めて貰えなくて
すっごく悲しくなる事、よくあったから
「梨沙子ちゃんは絵里の仲間!!ほられーなと雅ちゃんはどこか行けば良いじゃん!!」
「えっ、亀井さん何で私もなんですか?」
「あー、もう知らんけんね、雅ちゃん行くよ!!」
「えっ…ウチ本当に何の関係も無くないですか?」
目にも止まらぬスピードで
亀井さんは田中さんと何故かみやまで追い出した
二人を追い出した亀井さんは
やれやれって感じでため息をついた
でも、どこか寂しそう…
「梨沙子ちゃん…」
「はい…」
「今日、泊まってく?」
「ふぇ…?」
「いくよね?」
「あっ、はい…」
私は放っておけなくて
だからか分からないけど返事をしていた
あれ、今日って…
今日は確か、みやが家に帰る日
だから私はVientoに来たんだっけ
……
入れ替わりに私がVientoに住む事になりそうです…
* * * * *
「はい梨沙子ちゃん、これ」
「ありがとうございます」
すっかり日も暮れて
亀井さんは私に夕御飯にパスタまで作ってくれた
さっきからため息ばかりついている亀井さんは怒っているみたいで
でも、どこか寂しそう
「梨沙子ちゃんはさ…」
出されたパスタを食べていると亀井さんが話始めた
「雅ちゃんと喧嘩とかする?」
「えっと、よくします…しました」
「そっか…でも仲良いよね」
「はい、やっぱりみやの事好きだし」
この頃は忙しくてあんまり一緒に居なかったから喧嘩もできなかったけど
みやも私も負けず嫌いで譲らないから喧嘩になる事は多々あった
最終的にはみやはやっぱりお姉さんで
いつの間にかみやには色んなものを与えてもらっていた
「絵里もね、れーなと幼馴染で小さい頃からよく喧嘩してたんだ」
話を聞くにViento兼亀井さんの家の裏に田中さんの家があるみたいで
まるでみやと私みたいな関係
「でもさ、れーなっていつも優しくて絵里甘えてばっかりだった」
亀井さんの表情は凄く柔らかくて
田中さんは本当に優しい人なんだって、分かった
「絵里ね、専門学校出たら他のお店で働きたかったの」
亀井さんもみやみたいに夢があったみたい
「ここが嫌ってワケじゃないけどとりあえず出てみたかったの」
「…」
「で、雅ちゃんみたいに親と喧嘩して飛び出してやる!!ってなった時にれーながさ…」
少し思い出し笑いって言うか、思い出して微笑んだ亀井さん
私は不思議と気持ちが分かる
多分、亀井さんが田中さんを思う気持ちは私がみやを思う気持ちと似てるんだ
「“絵里が作ったもんはれーなが一番に食べるって約束しとろうが”って言ってくれたの」
「亀井さんが作るの美味しいですもんね」
「ありがと…でもさ、そうじゃなくてそれね、小さい時にした約束なんだよね…れーなずっと覚えてたんだよ」
あの単細胞のれーながだよ?
そう言った亀井さんは凄く幸せそうで
「だから絵里はれーなの為に作ろうって思ってるのに…」
「…」
私は言いたい事があるのに、何にも言えなかった
だって、こういうのはみやの方が慣れてる
私はいっつもそれを見て、何だか幸せな気分になっていた
「分かって貰いたいな…」
亀井さんの言葉は私じゃなくて、田中さんに向けられたものだった
* * * * *
Vientoを出て向かった田中さんの家は意外にもVientoの裏で
もしかして、田中さんたちもウチらみたいな関係なのかなって思った
「上がって良かよ」
「すいません…」
「やっ、れなが引っ張ってきたけん謝らんで良かよ」
綺麗に片付けられた田中さんの部屋は亀井さんの部屋とは全く違って
ウチは思わず笑ってしまった
「何笑っとるん?」
「いや、亀井さんの部屋と違うなぁと思って」
「あの部屋はまず地球じゃなか」
田中さんは何となくウチに似て見えた
亀井さんのダメな部分も知っているのに、それすら可愛く思えるんだろう
「失礼ですけど何で喧嘩したんですか?」
「あぁ…それなんやけどさ…」
どうもこういう事らしい
両親が旅行中だからその間田中さんはVientoで夕御飯を食べる事になってたらしい
田中さんは結構偏食で、それを知っている亀井さんは田中さん用に御飯を作っていた
だけど田中さんは時々はメニューを見て、自分で決めたのを食べたくて、それを亀井さんに言ったらしい…
そしたら、亀井さんが怒ったので田中さんもつい言い返したって所かな…
「結局は絵里が作ってくれとったヤツがその日食べたかったヤツやったりするけん良いっちゃけどさ、 れなやって少しは迷ったりしたいんよ」
「…そう、ですよね」
何と言うか…ウチらでさえそんな理由で喧嘩しないと思う
多分梨沙子が田中さんより素直ってだけなんだけど
何だかアホらしくなってきちゃった
ウチには新垣さんみたいに上手く二人を扱えないみたいだ
「…あっ、ウチやっぱり帰ります」
「そっか…」
「今日帰るって言ってたし…梨沙子も連れて帰るんで、その…」
でも、二人とも好きだから
仲直り、して欲しい
だから邪魔者は消えないといけない
「あの、頑張って下さい…」
「んっ…ありがと」
ウチに出来るのはこれくらい
それでも少し大きな事をした気分になった
* * * * *
「ねぇ、みや…」
「何?」
「仲直り出来るかな…」
「出来るよ、絶対」
「そう?」
「うん…何だかんだでお互いによく分かってるんだよ」
みやは夜空を見上げてそう言った
私はちょっと照れ臭かった
亀井さんと田中さんの事だけど
多分私たちもそうだから
「みや、手繋いで良い?」
「ウチ荷物持ってるから無理」
「えー、右手寒いー!!」
みやはそう言って少し早く歩いて、私より一歩前に行った
だから私も早く歩いた
「持つ」
「良いよ」
「持つ」
私はみやが左手に持っていた荷物を力づくで奪って持った
「本当、梨沙子は強情」
「知らなーい」
そう言ってみやは私の右手を握ってくれた
「梨沙子だってもう中2なんだからね、今日だけだよ」
「はーい」
みやの手は温かくて、優しくて
隣に居るんだって実感した
みやの事やっぱり大好きだって思った
「みや、おかえり」
「…ただいま」
この後帰りが遅くなった事をパパとママに怒られたけど
みやはやっぱり夢の事を両親に話せなかったみたいだけど
今日、みやが私の隣に帰ってきました