美味しいケーキはどうですか? 1


喫茶Viento 

スペイン語で風って意味の喫茶店 

 

美味しいケーキはどうですか?

街を少し外れた所にあって、近くの高校やら大学の生徒がよく訪れる 

店にはマイペースな店長代理と、それを支えてあげる少し口五月蝿い店員さん 
それに訛りが抜けない常連さんと、いかにも今時って感じだけど少しズレてる女子高生二人 
その他も皆個性的な人ばかり集まる 

そこに少しだけ 
他とは違った問題が起こるのは目に見えるほど明らかで 

ほら、今日もまた…

 

* * * * *

みんな知らない 
だけど私は知っているよ 

「梨沙子もこんな所に入り浸ってないで真っ直ぐ家に帰りなよ」 
「あ~、これ美味しいぃ~」 

みやが家を出て1か月 
両親との大喧嘩の末、そんな結末に至った 

そして今居るここは喫茶Viento 
元々は二人で買い物に来た時に見つけたケーキが美味しい喫茶店 
今は家出少女のみやが、住み込みでバイトをしている所

「もう、梨沙子っ!!」 
「んぐっ…詰まった、みや、飲み物…」 

みやと私は所謂幼馴染で 
みやの家族も私の家族もみんな、これと言った問題も無く過ごしてきた 

絵に描いた様な幸せ家族だったみやの家 
だから今回のみやの家出は一番の問題で 

「ほら、これ飲んだら帰ってよね」 
「うん…あっ、これ持ち帰りある?」

 

原因はみやの夢 
でも知っているのは私だけ 

この春から高校に通い始めたみやは本当は他にしたい事があって 
それは目の前にあるケーキの乗ったお皿が語ってくれる 

「あのさ、ウチ真剣だから」 
「分かるよ」 
「だから、いくら梨沙子でも邪魔っていうか、その…」 
「それも分かるよ」 

多分…うぅん、絶対 
私はみや以上にみやの事、分かっているつもり

 

だって、ずっと見てきたから 

どんなみやも格好良くて 
それでも一番格好良かったのは料理をしている時のみやだった 
ここでバイトしてるって聞いた時はちょっとだけ嬉しくなった 

「ほら、梨沙子…これ詰めたから、もう帰って」 
「はぁ~い」 

やっぱり私それなりに分かっているつもり 
だから、みやが嫌がる事をしたくない 

「あっ…梨沙子」 
「なぁに?」 
「あのさ…ウチ、一応ちゃんとまだ高校は行ってるから、その…」 

だけど、やっぱり私はみやの傍に居たくて 
小さい頃から築いてきたモノはそんなに簡単に壊せなくて 

「うん知ってる」 
「…その言い方なんかムカつく」 
「イヒヒィ~、ちゃんと報告しとく」 
「…ありがと」 

それはみやも一緒みたいで 
やっぱり私たちは幼馴染なんだって思った

 

「あとさ、それ…ママと…」 
「分かってるよ、最初からそのつもりだもん」 

いつまでも 
どこまでも 
私たちは幼馴染だから 

この問題が解決するのがあと少しだって事はなんとなく分かった 

「じゃあね、みや」 
「うん、色々…ごめん」 
「いーよ、みやだもん」 

あと少しで 
いつもの私たちに戻ります 
その時にはまたケーキ、食べに来よう